Tomoko Matsukawa 松川倫子

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マッチングサービス業界が気になる

以前 「こちらのガールズ恋愛事情」というエントリーで
書いた「オンラインデート事情」についての続編。

最近面白い話を聞きました。
オンラインデートの世界と
大人向けのオンライン教育という意外なところで
共通点があるのかもしれないな、という漠然としたお話。

現状・・・
その前に一応参考情報として
以下に アメリカの「オンラインデート」に関する 情報を記載します。
・アメリカの既婚者カップルの3分の1はオンラインで
 出会っている(オンラインデート業者のeHarmony
 調べですが2005−2012の期間に結婚した
 19000人前後を対象にした調査結果)(情報源
 オンラインで出会ったカップルのほうが離婚率が比較的低い
 という調査結果も最近話題になりました
・2012年2月の時点ではカップル成立の方法として友人紹介の次に
 多い第二位を占めていたオンラインという出会いの場(情報源
・「How Couple Meet and Stay Together (HCMST)
 という調査結果は様々なメディアに取り上げられていました
 (このページの一番下)
・また、"Dating Services Industry"に関する業界レポートによると
 2013年までの5年間に業界売上の年間成長率は2.9%
 2013年の業界規模は20億ドル (ちなみにちょっと
 Googleで調べてみたら北米の2万店ある珈琲店市場の
 業界規模が100億ドルとのことです) 成長の後押しは
 出会い支援ニーズが引き続き強いことに加え、 スマホ普及や
 GPSテクノロジーの進歩などが市場成長の 後押しをしている模様。
 プレーヤー数も4000弱と過去5年で年間3.1%も増加。
 その一方で業界再編/寡占化もやや進んでいる、と。
 自分の周りでもユーザーの多いMatch.com
   OKCupid.comとeHarmonyを傘下に持ち
 M&Aを重ねるIAC (InterActiveCorp)知名度ダントツ 情報源
※ちなみにここにある「Best Five-Year Employee Growth」
 業界別ランキング(絶対数では比較になりませんが)
 伸び率だけみるとDating Serviceの3.1%ってそこそこ
 高いことが分かったりします。

「HowAboutWe」という会社
とまぁ色々なプレーヤーがうじゃうじゃいる成長産業なのですが
最近聞いた 「HowAboutWe」というサービスが面白いと感じてます。
前述したような大手のサービス会社と異なるのでまずそれらと
どう異なるかを簡単に説明します。



大手のサービス会社(前述のMatch.comやeHarmonyなど)では
ユーザーとなる独身の人は自分のプロフィールや情報を埋めた後、
アルゴリズムが抽出してきた無限数の候補対象者リストから
買い物するような感覚で「デート相手候補」を
「この人はいいかも」「あの人はちょっと」と見定めて行きます。

写真+身体条件+肩書き+その他セールスポイントを見て、
頭でまず判断してからオンライン上で会話を始め、相手となんとなく
フィーリングが合いそうだ、と判断した時点で初めてデートが成立です。

男性側の話は聞いたことがないので分からないのですが、
女の子の中にはそのプロセスを繰り返していくにつれ、
若干の罪悪感のようなものを感じる人もいるようです。
(実際知り合いは「I feel like I am being so judgemental」と
 言っていました)
実際に合う前から色々な人について「品定め」をするわけなので
そう感じてしまうこともあるのかもしれないと想像します。

で、それらのサービス会社とは形態が異なる「HowAboutWe」。
これは何が違うのでしょうか。
このサービスでは独身の人が「相手」を見定めてからデートに行くかを
決めるのではなく、「相手が提案するデートプラン」を見て、
「このデートに行きたいかどうか」といったように判断を下す、
というプロセスが踏まれます。つまり判断材料として重視されるのは
「人」ではなく「プラン」になっています。
その分会ってみて当たり外れもあるのかもしれませんが
少なくとも前述の「ショッピング感覚」症候群には陥らなくて済みそうです。

この会社、シングルの人向けだけではなく、
カップル対象にデート案を提案するサービスも昨年始めています。
(このようなサービス提供会社はカップル成立=顧客卒業、
 となってしまう課題があるので、カップル成立後もいかに顧客として
 居続けてもらうか、という点を工夫したというところがユニークです)
2012年2月のTechCrunchの記事
ちょっとユニークなので印象に残る会社だなと感じます。

Adult Learnerとオンライン教育カリキュラム
で、話がちょっと飛ぶのですが、今私は短期限定でオンライン教育の
カリキュラムデザインのお手伝いをしています。

そのカリキュラムの対象層がadult learnerなので、お手伝いの一環として
adult learnerの特徴やニーズといったものを調べていました。

色々な資料を見比べた結果、良く出て来たメッセージに
「self-authoring(自分で創る)」learning experiencesを
提供することの重要性、というものがありました。

具体的には「学習者(設計されたカリキュラムを体験する人達)が
自らそのカリキュラムを出発点として経験を創り出して行く場を
提供すること」が重要ですよ、という話。

そのためには、①事前に色々と想定して設計したカリキュラムの
範囲外に物事が展開していってもいいんだ、と、学習者を
(カリキュラム設計側、提供側が)信じる気持ちが重要ですね、
だったり
②学習者が自ら見出した目的意識をドライブに行動した際に
そのサポートを柔軟に行えるような体制になっていること、が
大事ですね
といったようなお話。

・・このような自分の考察をチームのメンバーに報告していたところ、
チームメートの一人が「HowAboutWe」社の人と話していた時の
ことを「似ているかも!」と共有してくれました。

オンラインデートでも「self-authoring」?
上記の通りカップル向けに事前に同社が用意していたデートプランを
提供し「ラブラブ期の長期化」を支援しているHowAboutWe社ですが、
最近はユーザー側であるカップル達から
「自分達が設計したこのデートを他人にも共有したい」という声が
出て来ているのだとか。同社の用意していたプランからの派生物。

既に同社のメンバーである様々なカップルによって
「self-authoring」dating experiencesが誕生し、
他カップルに共有され、他カップルの共感を呼び、
複数カップル皆で一緒に体験する、といった動きも見られ始めている、らしく。

同社も想定外の展開に戸惑いつつも
そのようなユーザー発の動きをウォッチしながらサポートしようと
している、といったお話でした。

・・・・

オンラインラーニングのカリキュラムデザインの話から
オンラインデーティングの仕組みデザインの話に
飛ぶとは思っていなかったものの、共通項として
「adult」「self authoring」「体験の共有」といった要素が
含まれているこの両方の世界、面白いな、と感じました。
チーム内でも「self-authoring」はadult learnerにはやっぱ
大事だよね、という流れになっています。

「ビッグデータ」系、「共感&体験共有」系
ビッグデータの流れの先端を行く大手オンラインデートサービス会社達と
共感、体験共有などを切り口で新しい価値提供をしている「HowAboutWe」

教育の世界でも良く出てくるキーワードのindividualization, big data,
blended experience, adaptabilityなどがオンラインデートの世界でも
使われているというのもなんとなく気になります。

上手くすっきり対比が整理できないのですが、一見遠い二つの世界の間に何か
うっすらつながりがある気がしないでもない、そんなコトを感じた1日でした。




*最後おまけ*
COFFEE WHO(企業向け、社員同士のマッチングサービス)
とか
ソーシャルランチ(学生向け?OB訪問支援サービス)
とか
肉会(焼き肉限定のマッチングサービス)
などもありますね。