「教育学」の裾野の広さ(Columbia Teachers CollegeとNYUの話)
「教育学」を学ぶってことの多様性、ニューヨークという街で教育学の修士/博士課程に行くことに興味がある人向けのエントリ-です。(事前に断っておきますが、長いです)
私はボストンで学んだけれど、NYも面白い!
昨年の5月末に大学院を卒業してからニューヨークに行ってOPTビザ消化をしている訳ですが、9月頃から細々と始めた「『教育/学び』の仲間in NY」Facebook Groupのメンバーが20人ほどになりました。基本的には対面で会ったことのある人、既にメンバーである人達の紹介ベース、かつNYに物理的にいる/いた人をメインにしているので小さい、比較的intimateな会です。
今のところメインはColumbiaのTeachers Collegeに留学中の修士/博士学生6名、New York Universityの教育学に留学中の修士生/卒業生2名、その他既存メンバーの紹介ベースで「教育」ど真ん中でないけれど近い世界で学んでいらっしゃる方々や(デザイン、社会学、政策)、現地で教育のフィールドで働いている方などに参加していただいています。(既にニューヨークという場所を「卒業」している方もいます)
こういうの、自分が留学生活をボストンで送っていたときにあったら良かったのになぁと思うと同時に、「学生」を卒業してしまった自分が、「学生」まっただ中の①超多忙な②かつインプットを全身にあびてエネルギーに溢れている仲間と交流できることの贅沢に感謝しています。それぞれのメンバーの留学以前の経験の多様性と深さにも毎回大きな刺激をもらっています。
こういう人がたくさんいるんだ、というニューヨークという街の懐の深さ、そして情報/人材へのアクセスの良さ(物理的に皆が近い!)を感じます。(ボストンでは留学中に教育に興味がある日本人留学生に会う機会が比較的少なかった・・)
コロンビア大学とニューヨーク大学での教育学
さて、自分も2012年にコロンビア大学の教育学を受験した人間ですが、実は同校の教育学の裾野の広さをあまり理解できていませんでした(と今になって痛感します)。今回のコミュニティに参加している方々の学部/学んでいる事を聞く度に「そんな学部もあるのか!」と驚かされることもしばしばです。
今後コミュニティが成長していく中で一度整理しておこう!と思ったのでこの機にTCとNYUの教育学のプログラムをまとめてみました。情報は全てこのブログを書いた2014年当時のものです。
①コロンビア大学 Teachers College - The oldest and largest graduate school of education in US -
創立:1887(当時はコロンビア大学とは別の組織として設立され、1898年に今の姿になるも、運営上の独立性は保たれている)
Endowment:2億ドル
生徒数:5200人前後(フルタイムは1700人前後と3分の1程度)(学生の7割ほどがMasters、3割弱がDoctoral)、女性比率:76%、留学生比率:17..4%(81カ国)、そのうちの560人弱にあたる78%がアジア生
Median年齢:29歳(平均ではないです)
フルタイム教員:146、教員:生徒比率=5.3:1
ウェブサイト:http://www.tc.columbia.edu/
提供学位:Masters of Arts(M.A.), Master of Education (Ed.M.), Master of Science (M.S.), Doctor of Education (Ed.D), Doctor of Philosophy (Ph.D)
その他:John Dewey(哲学者)とのつながりが有名、Urban Schoolの抱えている課題drivenなコンテンツも多い、学校名にteachersと入っていても卒業後教師になるのは3分の1以下といわれている、創業時の拘りとして「学びに関わ人間として教育学心理学や教育学社会学などといった基礎学問を学ぶべきである、教育はEthicsやGood Societyの原理といったものと両輪で提供されるべきである」といったことを掲げていたらしい(wikipedia記事より)
10の学部、60以上の学科(以下から更に細分化されているところもあり)
Arts & Humanities(10学科)- Art EducationやBilingual/Bicultural EducationやEnglish Education、History & Education、Music Educationなどここまで細かく!と思うような学科の分け方
Biobehavioral Sciences(3学科)- 最近ホットと言われているNeuroscienceの教育への応用がここには入っていますね
Counseling & Clinical Psychology (CCP)(2学科)- 最近上記コミュニティに入ってくださった方がいるので色々と話を聞くのが楽しみです
Curriculum & Teaching(6学科)- 今じわじわと熱い(と勝手に思っている)Early Childhood Educationだったり、今後もっと世界的にもフォーカスがあたるのではと思っている(これも勝手に)Gifted Educationなどが気になります
Education Policy & Social Analysis (EPSA)(4学科)- 政策関連だったり、社会学との関わりなど。重要なエリアです
Health & Behavioral Studies(HBS)(8学科)- Health Educationがあるのはすぐ連想ができますが、手話関連だったり、Diabetes Education、Reading Educationがあるのが興味深い
Human Development (3学科)- そもそもTCの出自を考えてもかなり歴史が長いのではと想像されるHD。発達心理学、認知学の世界。ちなみに私はここのMasters of Artsにある「Creativity and Cognition」に惹かれて受けました。やっぱり当時は「教育」の海に何があるかの全体像、ぜんぜん分かっていなかったな、笑、と
International & Transcultural Studies(ITS)(2学科)- 社会人になってからAnthropology(文化人類学)を学んだ人は色々と面白いな、と感じることが多いですが、その学科はこちら。またHGSEでは一大勢力でもあるInternational and Comparative Educationもあります
Mathematics, Science & Technology(MST)(3学科)- 私の卒業したHGSEのTIEと一番近いのはここにあるCommunication, Computing, & Technology in Educationでしょうか。更にそこから細分化された中にあるInstructional and Technology Media学科に文部科学省から来ている日本人の友人がいます。彼とTIEとの比較を話すのはなかなか面白いです
Organization & Leadership(O&L)(5学科)- 今受験し直すなら私はこの学部を受けると思います。Adult Learning and LeadershipとSocial-Organizational Psychologyらへんがツボですね。上記コミュニティには二人ここの人がいるのでもっと彼らが卒業しちゃう前に色々教えてもらいたいです
②ニューヨーク大学 (New York University Steinhardt School of Culture, Education, and Human Development)
※ここは学部レベルのプログラムもあるのですが、以下のデータはなるべく修士+博士のものを記載しています
創立:1890(2001年まではNew York University School of Educationと呼ばれていた、2001年にヘッジファンドマネージャー(現在既に引退)による1000億ドルの寄付金を受けて名称変更、当時はSteinhardt School of Educationだったが、2007年にプログラムの多様性を考慮し再度変更)
生徒数:3500人前後(修士+博士3500人のうち、修士は3000人)(フルタイムは6割程度、毎年卒業生は修士1400人ほど、博士100人ほど))、女性比率:74%、留学生比率:15%
Mean(平均)年齢:30歳
フルタイム教員:133、教員:生徒比率=3:1
ウェブサイト:http://steinhardt.nyu.edu/
提供学位:Masters of Arts(M.A.), Master of Science (M.S.), Doctor of Education (Ed.D), Doctor of Philosophy (Ph.D)など
大学名が変更になったことからも分かるように提供されている学部の多さに目が回ります。Occupational TherapyやMusic関係が特に学校としては有名のようですが。大きく分けて①Applied Psychology、②Art、③Education、④Health、⑤Media、⑥Musicに別れています。
EducationのかつMastersという縛りで検索すると、以下が出てきました
今回はこの二つの学校について書きましたが、もちろん、NYにはここ以外の大学院もたくさんあり、アメリカでという国でみれば他にもStanfordのSGSEだったり、U. PennのGSEだったり、University of MichiganのSoEだったり、Johns HopkinsのSoEだったり、教育学での有名どころがあります。そして何を学ぶか、どの教授のもとで学びたいか、どの都市で学びたいかなどで全然違ったりします。学部の時にくらべて「どこの大学・組織で学ぶか」がもっともっと重要になるのが修士以降の体験。
(参考)ハーバードの教育学大学院(マントラ?は「operating at the nexus of practice, policy, and research」)
創立:1920
Endowment:4.9億ドル
生徒数:1000人前後(修士+博士)(フルタイムは95%、私の代では修士700人ほど、博士300人ほど、日本人は悲しかなの二人、2014年卒のクラスは修士メンバーが570人、博士も合計50人と急にスケールダウン)、女性比率:72%、留学生比率:16%(35カ国)
Mean(平均)年齢:28歳(全体のレンジは20歳から58歳)平均就労経験は4.2年
フルタイム教員:52、教員:生徒比率=4.7:1
ウェブサイト:https://www.gse.harvard.edu/(学生プロフィール詳細)
提供学位:MasterはMaster of Education(M.Ed)のみ、Doctor of Education (Ed.D)(今後廃止予定) Doctor or Educational Leadership (Ed.L.D.), 2014年からPh.D. in Educationが加わります
その他:多重知性(Multiple Intelligence)やGood Worksプロジェクトで有名なハワード・ガードナー教授、Immunity Changeで有名なロバート・キーガン教授、セサミストリート開発に大きな影響を与えた故レッサー教授。近年の卒業生で有名なのはHarlem Children's ZoneのGeoffrey Canada氏(「Waiting for Superman」という映画のベースベースに)
その他:ColumbiaとNYUは分からないのですが、HGSEではMITや他のハーバード(HBS、Kennedy School、Public Health、Design)と単位交換が容易であることもあり(抽選もありますが)Cross Registrationをしている人が多いです。私もMITのスクラッチプロジェクトでのインターンは授業の代わりでした。
プログラムは13学部と小なめ
Arts in Education
Education Policy and Management
Higher Education
International Education Policy
Special Studies
Technology Innovation and Education
Teacher Education
Mind, Brain and Education
Prevention Science and Practice
School Leadership
Human Development and Psychology
Language and Literacy
Learning and Teaching
学校はそれぞれプログラムや教授毎に特徴があるはずですので(また教授は比較的頻繁に別の大学に行ってしまったり、サバティカルに入ってしまって教えていなかったりするので)、立地に特に拘りがない場合は広くリサーチすることをオススメします。(もちろん、イギリスを含むヨーロッパで教育を学ぶのもとても魅力的だと感じています)
教育って本当にinterdisciplinaryで面白い。留学して自分が見た気がしていたのは氷山の一角だったなぁ、と。受験していた2012年初もほとんど知らなかったことが多かったなぁ、と。
大学院の経験はもちろんですが、こういう風にNYという色々な人材が集まってくる場所で、卒業後に自分の専門とは離れた(でも関係のある)別の専門分野を極めている仲間達につながることができるのが楽しいです。彼らが教えてくれるインプットが自分の専門に与えるインプリケーションはなんだろう、といったように考えることを継続的に出来るのも有り難いことです。
グループでたまに実施する「ざっくばらん会」
このコミュニティ内で最近ほそぼそと「ざっくばらん会」を実施するようになりました。最初は「懇親会」的な感じで昨年末にメンバー内でディナーをする、といったイベントを実施していたのですが、2014年初の「文部科学省について学ぼう」に始まり、出張中の友人を囲んで「デザインシンキング、創造性教育について語ろう」、私は参加できないですが今週末は「コミュニティオーガナイジング、若者の政治参加」関係の方々が出張中にNYに来るらしいので彼らを囲んでの「ざっくばらん会」があるようです。
オンラインのFacebook Groupっていくつか参加していますが、やはりオフラインとオンラインが上手く合わさった(規模化に限界はありますが)コミュニティはいいな、と感じます。
今後2-3ヶ月で次年度入学の結果もおそらく判明するはず。(HGSEはおそらく3月の第一週)また新しいメンバーが入ってくるのが楽しみです。(ボストンにいるメンバーとのパイプも数人できていますがもっと強めていきたいです)
関連エントリ-: