Tomoko Matsukawa 松川倫子

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2018年の秋、トランプ政権下でビザ問題に想いを馳せる

2012年の夏の終わりに学生ビザF1でこの国にやってきてから、もう6年が経ちました。

節目節目でF1ビザからそのあとのOPT、その後の企業スポンサーでもらったH1Bビザ。そしてその更新、と、それぞれの過渡期に色々なことを学んできました。

何度かブログにまとめてきましたが、トランプ政権が本格化した2017年から今日に至るまで、ここに全てを書き記す暇がないくらい、自分の周りや、この国で色んなことが起きているので、一旦整理・・。

カバナー承認と中間選挙の狭間で

最高裁判事候補であったカバナー氏の承認が先週決まってしまいました。そして中間選挙という重要な選挙は数週間後。この国で選挙権を持たない私ができることはほとんど何もなく、色々と運とタイミングに恵まれてきた自分に直接の影響は短期的にない一連の出来事なのですが、なんだか心の中がザワザワしています。

遠くに小さく見えていて、「自分には関係ないし」と思っていた波が、油断している間に、直前まで予測もできなかったような、大きな波になって自分を含む多くの人を飲み込んでしまうのでは、というハラハラした気持ちをうっすら感じているのかもしれません。

直近のカバナー騒動では彼の過去の女性暴力問題のことが大きく取り上げられていましたが(そして、それも確かに問題なのですが)それより、9人目として彼が承認されてしまったことで最高裁判事のバランスが保守5人・リベラル4人になってしまったということが個人的には心配です。(日本の方で「カバナー騒動って何?」と思われている方はこちらを

そして中間選挙。ここで上院議員のうちの3分の1と下院議員全員が改選となるのでトランプ大統領の与党である共和党が議席数をキープできるのか、が注目です。

直近は今まで政治色を一切出してこなかった歌手のTaylor Swiftまで民主党支持者であることを公言して、投票登録締切日までファンに投票登録を呼びかけていて話題になりました。

やはり気になるのは移民政策

前述の通り、自分は運とタイミングが良かったため、中間選挙の結果がどうなろうか、トランプや最高裁が極度に保守的な政策に偏って行こうが、短期的には影響を受けません。911のテロの直前にソーシャルセキュリティ番号を入手し、オバマ大統領時代にH1Bビザを手に入れ、オバマ大統領からトランプ大統領に切り替わった直後でフワフワしていた時に、サクッとH1Bビザの更新を済ませることができました。

でも・・・・数え切れないくらい多くの人たちが周りで色々な形で影響を受けていて、2020年以降の私も例外ではありません。過去1年の間だけでも色々な事例を見てきました:

  • 自分とほとんど似た状況にもかかわらずH1Bのビザの書類が間に合わず国を出なくてはいけなくなった友人

  • H1Bビザの更新のために私よりも1−2ヶ月不安な時間を過ごした友人

  • Lビザの更新に母国に帰ったら滞在期間が2週間じゃなく3ヶ月になった友人

  • 米国人と結婚してグリーンカード申請をしていたらギリギリ自分の結婚式(アメリカ外でやる予定だった)に間に合わなくなりそうになった友人

  • H1BからOビザに切り替える際に移民局の手違いがあってビザキャンセルされ週末出かけてた海外旅行先で足止めになった友人

  • 日本の資本でこちらで会社を持ち働いていた友人も書類不具合とかで急遽日本に短期?帰国になったまままだ戻れてない友人

私たちのビザの手配などを手伝ってくれる弁護士の人も「なかなか今回は予測できないことで」とトランプ政権以降の予測不可能度を匂わすような発言を繰り返していて、そしてとても忙しそうです。

トランプ大統領の時期が過ぎたら元に戻るだろう、という話ではもうないような気もうっすらしてきていていて、今回の最高裁判事の件も含め、中間選挙の結果次第さらにアメリカがより保守的な方向に進んでいく可能性も少なくないかもと感じます。

トランプが大統領になってから

そう、どんなことが彼が大統領になってから話題になっていたっけ、と振り返って一つ思い出したのが2017年の2月に最初共和党の議員から提案された「RAISE Act」。トランプ大統領も支持したこの過激な移民政策案、結局は議会を通過しなかったものですが、受け入れ移民数を現状の半分に減らそうというものでした。流石に共和党の議員にも反対され通過しませんでいたが、「How Many Americans Would Pass the Immigration Test Endorsed by Trump?」を見てみるといかに極端なものかとういうのが分かります。(ちなみに私はここのクイズやって見ましたがポイント不足で移民不可でした)

また、2018年の4月のNew York Times紙にあった「A Marriage Used to Prevent Deportation. Not Anymore(以前は米国籍の人と結婚すれば違法滞在者の国外追放は免れた、でも今は違う)」という記事もなかなか衝撃的で、最近は結婚によるグリーンカード申請のための面接に行った現場で過去の不法滞在記録を指摘され逮捕されるということが増えているとか。また5月の記事では学校内も(不法滞在者にとっては)安全とは言えなくなっている、とも。

2017年年初以降トランプ大統領が逮捕した違法滞在者の数は4割増えたと記事にはありますが、その後も増え続けているのは間違いないと思います。

今回の選挙の前後にはきっとDACA(日本語ではダカと発音)というオバマ大統領政権下で始まったプログラムを終わらせるかどうか(トランプは終わらせる方向で主張)、終了時期をどのくらいまで延長できるかのニュースも出てきそうな気がします。影響を受けることになるのは現在推定70-80万人はいるとされている米国内に滞在している人たち。(と言っても米国に来たのが16歳の誕生日前とか、2012年6月15日の時点で31才以下など、やや不自然なところで対象となる人とそうでない人たちの線引きがされているのですが)DACAについては日本語こちらや(ただこの記事が書かれた2012年からは相当対象者となる人たちを取り巻く環境はアメリカで悪化している)こちら「日系のハーバード大学生、トランプ政権で不法移民としてクラス心境を語る」を拝見しました。

Twitterや様々なメディアの記事のコメント欄を見ていると「違法は違法でしょ、合法で入ればよかったでしょ」という意見もよく聞き、その理論もわからなくもないのですが、こういう個別のストーリーを見ると、日本という恵まれた国に生まれ、自分の選択で、ゆとりを持って合法的に米国に入国する手段が手元にあった自分はなんともコメントできない問題だなと思います。日本人はグリーンカードの抽選にも応募できますし。家族に会いたいときに会える立場です。

・・・と前回書いたエントリーを含め日本人として生まれたことを色々と考えさせられることが多い最近です。アメリカという国はどうなって行くのだろう、とも。

参考:「What to know about Trump's Immigration Policies When You Vote November 6th」

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