Tomoko Matsukawa 松川倫子

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日本のパスポートを持つということ

そもそもこのエントリーを書こうと思ったきっかけはHenley & Partnersという法律事務所が作っている「Henley & Partners Passport Index」というデータだった。

パキスタンやガーナやインドやコロンビアといった国の同僚からは「日本のパスポートは(様々な国への訪問にビザが必要がないという点で)とても恵まれている」とは言われてきていた。この指標はそれを具体的に数値化しているといった印象だ。

それがデータとして正確なのかどうかはよく分からない。この指標をウェブサイト上に公開している、この事務所は1990年代から世界の富裕層のために国籍取得や国を超えた移動に関するアドバイザリー業務に携わっている会社らしい。

(この指標によると)日本のパスポートは最強らしい

そのランキング結果(Global Rankingのページより)によるとトップの日本は一位だけれど実質はトップ5カ国はどんぐりの背比べといったところ。

1位:日本

2位:シンガポール(日本との差は1ポイント)

3位:フランス、ドイツ、韓国(これも日本との差が2ポイントと僅差)

4位:フィンランド、イタリア、スペイン

5位:ノルウェー、英国、ルクセンブルク、オランダ、ポルトガル、米国

ちなみに、私の日頃からやりとりをしている同僚達の国はこんな感じだった。

6位:カナダ

22位:メキシコ

42位:コロンビア

73位:ケニア

78位:ガーナ

81位:インド

100位:バングラデッシュ

104位:パキスタン

参考:https://www.henleypassportindex.com/passport

ネパール出身の、カリフォルニアに住んでいる友人を思い出した。彼が米国籍を取得してネパールのパスポートを放棄したという話をしていた時に(ネパールは二重国籍を認めない)「どうして?」って聞いたら「だっていい事ないもん、ネパールのパスポート。旅行に気軽に行ける場所限られているし」と言っていたことを思い出す。

私は当面日本のパスポート(つまり国籍)を放棄する意思や予定はない。アメリカ人と結婚しても日本の国籍を維持したままグリーンカードというビザを得る道もあるし。ただ、ちょっと気になった。両国の国籍取得という選択肢があった場合、または米国で自分の子供が生まれたりした場合、何がおこるのだろう。日本国籍(パスポート)をキープしている人はなぜそうしているのだろう、誰がキープできるのか、そして二重国籍を認めていない日本はどうしてそうなんだろう、とか、何か今後変化はあるのだろうか、とか。

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でも、日本は二重国籍禁止の国

まず、最初に覗いてみた 法務省のページには日本の国籍と日本以外の国の国籍を有する人(✳︎)に「一定の期限までに」一つを選択すること、と書いてあった。この(✳︎)に属する人たちでも、特に自分の周りに多いのは以下のパターン:

日本国民である父または母(あるいは父母)の子として,生地主義(その国で生まれた子に,その国の国籍を与える主義)を採る国で生まれた子(例:生まれたときに,父母が日本国籍であり,かつ,アメリカ,カナダ,ブラジル,ペルーの領土内で生まれた子) 

法務省によると、こういった人たちは以下の「一定の期限」までにどちらかを選ばなくてはいけないらしい:

ア 20歳に達する以前に重国籍となった場合→22歳に達するまで

イ 20歳に達した後に重国籍となった場合→重国籍となった時から2年以内

それまでに申告をしないと・・・法務省曰く:

「上記期限までに国籍の選択をしなかったときには,法務大臣から国籍選択の催告を受け,場合によっては日本の国籍を失うことがあります」

実際に「催告を受け」ることは滅多にないようだけれど、日本は正式な「二重国籍NO」の国。発見した「二重国籍 : 認める国と認めない国」というブログ記事には、日本の他にどこが二重国籍を禁じているかがまとめてある。

そのエントリーに登場していたような国際結婚経験者や長期間海外で働いている日本人は私の周りにも多い。みんな二重国籍禁止のことは知っている。でも「正直者が馬鹿を見る!日本の国籍法について日本人が知っておくべきこと6つ」にあるように、日本の国籍選択制度がきちんと機能しているかと言うと、そうではないと思っている人が私を含めた大半な印象で、いつかは日本も二重国籍を認める日々がくるのでは、と期待している人もいる気がする(ちなみにこの後者の記事の「3: 日本人がいる海外居住国の93%は重国籍を認めている」「4: 国籍法が改正されたのは30年以上前」「6: 国籍=アイデンティティでもない」は個人的にオススメ)

そもそも時代的背景を抑えたい場合はQuoraにあった「日本はなぜ二重国籍を認めていないのでしょうか? 」に対する答えやこの記事が参考になった - 「『国籍』は揺らぎ続ける—世界の潮流から取り残された日本の国籍法」。

米国・日本を往復する人として気をつけておくこと

日本国籍と米国籍の間を揺れている・いつか揺れることになるだろう人たち向けの情報としては、在ニューヨーク日本国総領事館のページが参考になった。

ここで私が初めて知った情報は:

  • 日本国籍を持つ親から米国で生まれた子供は本来日本国籍をもているのだけれど、出生から3ヶ月以内に国籍留保届けを提出しなかいと日本国籍を喪失すると言うこと

  • 「本人が国籍喪失について届出を提出していなくても国籍を既に喪失しているケース」「日本国籍を喪失しているものと思い込んでいたが実際は喪失していないケース」が米国内でも頻繁に生じていると言う事実

  • 国籍喪失者は国籍喪失届が出されると戸籍から抹消されるということ。戸籍が存在していない=戸籍謄(抄)本も請求しても交付されない

  • 「米国籍取得の事実(=日本国籍の喪失)を隠したまま身分事項の変更(結婚や出生等)を行うと,それら手続きが不実(事実で無いこと)に基づいたものとなるため,日本国籍喪失の事実が判明した場合は国籍喪失事実の発生以降に行われた不実に基づく全ての手続きが無効」になると言うこと。「本人だけでなく家族や他の関係者の法的地位や経済活動にまで大きな影響が出る」という。

と、いう感じ。

当事者の方々の情報・最新の動き in 日本

自分にとってはまだまだ遠くに感じるこれらのトピック、当事者として色々感じている方や行動している方がたくさんいるというのも、この数時間で学ぶことができた。

発信している人がオンラインにはいっぱいいた。

などなど。

ま、こちらのアメリカでも先月大統領がこんな発表「New Trump rule would deny green cards to immigrants who took food stamps, Medicaid」をして世間がざわざわしていたり。過去1年の間に周りで本当に多くの人がビザ関連のハラハラを経験していたり。自分もこれからどうなるかよくわかりませんが、ビザ関連についてはまた別のエントリーにて。

関連エントリー:2018年の秋、トランプ政権下でビザ問題に想いを馳せる