Tomoko Matsukawa 松川倫子

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OPT、H1B(初回と更新)、そしてその後はどうなる?

2019年8月に書かれた内容です。2023年2月時点、当時に比べて、H1Bビザに関してかなりのことが変わりました。最新の情報は専門家にぜひご確認ください。


これは、大学院留学中の2013年に書いた「F1ビザ、OPT、そしてその後はどうなる?」の続きのエントリーです。

あれを書いていた2013年はオバマ大統領時代のアメリカでした。多くの人が知っているように、あの頃はビザseekerにとって「古き良き時代」。

その当時に書いた情報と現状の乖離が大きくなっているので更新の意味も含めてまとめておこうかと思います。

前提として押さえなくてはいけないポイントは2016年以降のアメリカにおける就労ビザを取り巻く環境=VUCAワールドになったということ。VUCA = volatile(変動的で)uncertain(不確実で)complex(複雑で)ambiguious(曖昧な)世界。2019-2020年とVUCAワールドは続きます。

どうVUCAワールドかというと・・

  • H1B就労ビザは基本的には「3年もの」「一回更新可能(つまり合計6年)」プラス「H1B保有期間にアメリカ国外に出ていた時間を最後に足し戻すことが可能」という仕組みにこのエントリーを書いている時点ではなっているものの、2020年大統領選挙を前になんらかの変更が発表される可能性がなくはないということ

  • 従来は4月に抽選があり、抽選で選ばれ、書類審査を通過した人には、その年の秋にはビザが付与されていたのですが、必ずしもそのタイムラインが当てはまらないケースが増えてきているということ

  • H1Bビザに限らず、グリーンカードの応募・申請(それが企業スポンサーだとしても、配偶者スポンサーだとしても)にかかっている時間もありえないくらい長引いているということ

  • そもそも「大丈夫だろう」と思われていたF1(学生)ビザでもアメリカに入れないというケースが存在しているということ(おそらく日本人は大丈夫だと思いますが)

  • 2019年時点、長年のベテランの移民法の弁護士の方々でさえ、「予測不可能」と言っている環境であること。つまり私のエントリーの内容はもちろん、「専門家」というラベルが付いている人たちが言っていることにもたまたまその瞬間で起きている事象のまとめにすぎず、将来の予測には使えないということ

重要な意思決定をされるときはその都度自分自身の置かれているユニークな状況を知っている「専門家」(&責任を持っている人)に相談しましょう。そして、その周りの人たちが言っていることの信憑性・信頼性を判断することができるよう、基礎知識はたくさん集めておきましょう、と感じます。

そんな私が2012年から今までアメリカにいる間に見聞きしていること、自分が学んだこと、自分が体験したことを整理しています。


2014年から2016年までの世界

外部環境:

オバマ政権時代

私の状況:

H1B申請・抽選合格・書類審査通過・H1Bビザ確保、H1Bの最初の3年開始

H1Bを申請しようとする人の増加に伴い、2014年の時点ではすでに年一回の抽選を回避することが難しくなり「以前より大変になった」という印象のあったH1Bビザ(会社スポンサーを元にした就労ビザ)でした。

過去エントリー:以前より大変になった?H1Bビザ

そもそも抽選を通ったとしても(修士号を持っている場合のほうが学士号のみの場合よりも抽選のチャンスは高い)その後の書類審査でも気を緩めることができないプロセスです

過去エントリー:H1B申請To Do(昨年の自分の体験より) 

今振り返ってみると、当時の「大変」なんて、今とは比べものにならないじゃん、と思わされるのですが・・・。そして、注目の過去2年にアメリカはunprecedentedな(前例のない)フェーズに突入します。

2017年から2019年までの世界

外部環境:

トランプ政権時代

私の状況:

H1B更新申請・更新許可・延長H1Bビザ確保、H1Bの後半の3年開始

トランプ政権が始まった直後の2017年4月にH1B更新の手続きをした私はギリギリラッキーでした。なぜなら、2018年、2019年にH1B更新を体験した同僚たちの抱えていたストレスやリスク(プロセスの遅延や不透明感によるもの)を横で見ていたからです。

結局更新組は皆無事完了していましたが、初めてH1Bに応募をしようとしていた人たち、グリーンカード申請をしようとしていた人たちは軒並み追加書類申請リクエストや想定以上の待機時間を体験していました。

その時期に日本に本帰国することになった人や、ビザ関連の理由で数週間から数ヶ月アメリカ国外で待機を余儀なくされていた人たち、待機時間に国外に出ることを防ぐために仕事の出張を全てキャンセルしなくてはいけなくなった人たちや、ビザ申請タイミングを見越して国外結婚式のタイミングをずらした人たちなどを見てきました。

過去エントリー:2018年の秋、トランプ政権下でビザ問題に想いを馳せる 

アメリカに住みながら「自分は日本人である(から、ある程度守られている、そしてパスポートの国で差別が生まれる今の状況はおかしい)」と意識するようになったのは、2001年以降初めてのことでした。

過去エントリー:日本のパスポートを持つということ

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2020年以降の世界に向けて今

外部環境:

次回大統領選挙は2020年。そこでの再選を意識して現大統領は何らかの行動を起こしてくる可能性は大きいと感じます。実際にすでに違法滞在者の一斉検挙であるとか空港での入国審査の厳格化とかメキシコとの国境にある不法移民拘束キャンプ上の拘束期間の無期延長にする、とか、グリーンカード抽選の仕組みを無くしたい、とか、アメリカの国籍取得にまつわる出生地主義を変えたい、とか色々にぎやかです

私の状況:

H1Bの後半の3年の中間点、その後について考える時期

そして今、H1Bはどう頑張っても最長7年(それも変わる可能性が残されている)と考えると自分に残されたオプションは何かだろう。現在リサーチモードON。一部は冒頭に紹介した2013年の記事にもありますが、以下に改めて収集した情報を整理します。

H1Bの後のオプション:O1ビザ

特殊な能力を持っていることが証明できた人に与えられるビザ。"Individuals with Extraordinary Ability or Achievement"である、ということを証明し、書類準備をすることがもとめられます。カテゴリーとしては3つあり、①アート分野、②ビジネス分野、③テレビ&報道分野と大きく別れるようですが、②のビジネス分野は"requires highest burden to proof"であるという弁護士のコメント。

美容師さんであるとか、女優さんであるとか、デザイナーであるとか。①の幅は色々です。どのカテゴリーに申請するとしても、

ここの「Evidentiary Criteria for O-1A」に書いてある8つの要素のうち、最低3つを確実に証明できる必要があり、もちろん多ければ多いほど、証明が簡単であれば簡単であるほど(例えばGoogleで名前を検索したら一発でたくさんの情報が手に入る、など)いい、とのこと。

また「業界の著名人、またはindustry experts」からの推薦状(確か10人弱)の重要性が高いらしく、彼らから以下のことを文章にしたためてもらう必要がああったり、と準備の煩雑さ・難易度は高めです。①で取っている人はよく聞きますが②のビジネス分野でどういう人が取っているかは自分の限られたネットワークだと限定的です・・。

H1Bの後のオプション:一旦アメリカ国外にいき365日以上経ってからH1B再応募

今持っているH1Bが失効した後、国外にいき365日以上同じ会社で働き続けた場合は、そのあとの4月にまたH1Bに再応募することが可能らしいです。つまり、2020年9月にH1Bが失効する場合:

  • 2021年9月すぎまでアメリカ国外で働き(同じ組織の別支店など)2022年4月(H1Bの抽選は毎年今のところ4月)でH1B申請・抽選を経て2022年10月に新しいH1Bでアメリカ国内で勤務開始という流れですね。もちろんこれは次のH1B申請〜取得までがスムーズにいくシナリオの場合です。新しいH1Bが取れればまたそこから6年(3年x2回)が始まります。

H1Bの後のオプション:一旦アメリカ国外にいき365日以上経ってからL1ビザに

似たように、H1Bをスポンサーしてくれたときと同じ会社で働き続けた場合は、今持っているH1Bが失効した後、国外にいき365日以上同じ会社で働き、そのあとL1AまたはL1Bビザで戻ってくることも可能とのこと。L1Bは何らかの専門家としての立場として来ることになり、最長5年。L1Aの場合はマネージャーとして赴任。最長7年もので、その後グリーンカードへの道はL1BやH1Bの人よりも比較的楽という話も。

今月(2019年8月)時点で弁護士と話した段階では「過去8ヶ月申請する人が増えている」と教えてもらいました。

H1Bの後のオプション:Eビザ

別にE-1、E-2ビザというものがあります。情報が最新かはわかりませんが、このサイトがわかりやすかったです。簡単にいうと、日本国籍を持つ私が、アメリカに事業進出している日本企業(日本から大半の資本が出ている)で働く時に関係してくるビザのカテゴリーのようです。

最長滞在期間が定められていないことや配偶者もアメリカ国内で働くことができる、申請は移民局の審査なしで在日アメリカ大使館でできる、などが特徴です。

H1Bの後のオプション:Fビザ

もちろん、また学生に戻ることでアメリカ国内に残るというオプションはあります。とはいえ、最近ハーバードの新入生としてパレスチナからボストン空港入りした学生が拘束され、その後母国にUターンすることになったというショッキングなニュースもあったので、100%とは言えませんが。

関連ニュース:Incoming Harvard Freshman Deported After Visa Revoked

関連ニュース:Foreign Student Visa Issuance Is Down Over 40 Percent

H1Bの後のオプション:Gビザ

最後に私の周りでちょっと話題になっていたのはこのカテゴリーのビザ。Visas for employees of international organizations and NATO。具体的にはこのサイトに掲載されている各国際機関で働く人たち向けに出されるビザのことです。日本に馴染みがある組織だと、IFCとかIMFとかUNICEFとかUNDPとか国連系の組織も入ります。

H1Bの後のオプション:Diversity Visa Programへの参加(グリーンカード抽選)

これは1%弱くらいのチャンスしかないので、まあ当たれば御の字という感じですが、2019年8月の時点では廃止は発表されていないので今年の秋も応募ができるのだと思います。抽選に参加資格のある国籍は決まっているのですが、日本国籍はOK。応募も10分弱で出来てしまう簡単なものなので、とりあえず登録しておくことをおすすめです。私は3年?連続でハズレていますが。

過去エントリー:グリーンカード抽選プログラム 

以上、現時点で自分が見聞きしたことのまとめでした。他にもカナダでの就労ビザ・永住権取得に目的をシフトしている人も周りにいたり、と、皆それぞれ変化し続ける外部環境に合わせて色々な試行錯誤をしています。

どんなに知識をつめこんで、計画を立てても想定外のことが起きるのがアメリカライフなので、これからも何が起こるかわかりませんが、こんな風に不確実性の高い、曖昧な世界を身近に体験できるのもある意味貴重だな、そう思います。