Tomoko Matsukawa 松川倫子

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ゴットマン博士による「関係性を破壊する 4つのコミュニケーションの悪癖」

近年、政治について、人種差別に対する考え方について、コロナ対策の在り方について、子育てのあり方について、・・・と色々なことに対する意見の相違を目の当たりにすることがあったり、それによって認知・情緒面で様々な葛藤を感じることが増えている。

そんなとき、ゴットマン博士の、表題にある4つの悪癖のことを思い出す。彼の記事は(英語だけれど)人に共有することも結構多く、いつかブログに整理したい、と思っていたので、今回はそれについて書いてみる。

元の英語の記事のタイトルはThe Four Horsemen: Criticism, Contempt, Defensiveness, and Stonewalling。

もともとゴットマン博士の専門領域は夫婦関係・カップルセラピー。

そんな文脈での「関係性を破壊する4つのコミュニケーションの悪癖」の話だけれども、家の中だけでなく、外にいる人たちとの関係性をtoxicなものにしないためにも、また、自分と異なる考え方や物事への見方を持っている人たちとの向き合いかたに自覚的になるためにも役にたつな、と思ったりしている。

Four Horsemenとは

ゴッドマン博士の記事のタイトルにあるFour Horsemen。これはキリスト教の「ヨハネの黙示録の四騎士」という考え方からきていて、それぞれ「支配する」「戦争をおこす」「飢餓をもたらす」「(疫病や野獣をもちいて人間を)死に至らせる」という力をもっている四人の騎士たちのことを指す。彼らが出現する・集まると、人類は苦しむ、という文脈で使われている。

それにならい、ゴッドマンは博士はCriticism, Contempt, Defensiveness, and Stonewallingという「四騎士」たちが、人と人との関係性を蝕む要因となる、という。その、コミュニケーションの在り方にまつわる悪い癖=「四騎士」たちについて、それぞれ以下に整理する。

Criticism(批判・非難)

まずはCriticism。「建設的な批判(相手の改善を期待して支援の意味で伝えるもの)」や「不満を伝える(自分はこういう受け取り方をしていると伝える)」とは違って、相手の性格特性や人柄や大切にしていることなどを攻撃するニュアンスがある「批判・非難」。

コミュニケーションの受け手に「自分の存在や在り方が否定されている」と感じさせてしまうことが多いもの。

元記事にあるように、criticismはそれ単体で二人の間の関係性が致命的になることは少ないものの、それをきっかけとして、「攻撃された、拒絶された、傷ついた」とどちらかが感じることが重なったり、criticismを交換する頻度やその内容の刺々しさが知らないうちに増していったりすることが、次の「騎士」であるcontemptに繋がっていくことがリスクと言われている。

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Contempt(軽蔑・侮辱)

そしてContempt。この二番目の「騎士」が二人の間で登場するときには、すでに我々の心はイジワルなものになっている、とゴッドマンの記事は言う。自分は相手よりより優位な存在("moral superiority")であるという前提のもとで、相手に対して「だからあなたのここがダメ」という自分の中でのゆるぎない理論が頭でいっぱいになっている状態に登場するものだ。

言葉に出す出さないは別にして、そのようなマインドセットで相手に接していれば、相手は少なからず「自分は軽蔑されている、価値がないと思われている」と感じ取ってしまうもの。

とある夫婦が将来離婚するかどうかの確率を予測する因子としてcontemptが夫婦間のコミュニケーションで登場する度合いがある、という。また、元記事にあるように、contemptに溢れているコミュニケーションをすることが多いと、免疫力低下を引き起こすという研究結果もあるらしく、関係性のこじらせが身体的な影響を及ぼすということも無視できない。

参考:The Four Horsemen: Contempt - Contempt is the worst of the four horsemen. It is the number one predictor of divorce, but it can be defeated.

Defensiveness(言い訳・自己防衛)

そしてDefensiveness。これはcriticismに対する反応として出現しやすい、それに加えて自分に対しての具体的な批判・非難がなくてもこれを口にする人はいるし、自分が心の奥でちょっとした後ろめたさがあるときに頭をよぎりやすいのがこのdefensivenessだ。

自分の非を認めない、自分を守ることに意識が集中している状態にあるときというのは、相手の発言の背景に存在する想い・願いであるとか、二人が共に体験している状況であるとか要因であるとか、自分にもその状況を作り出している責任の一端を担っている可能性があることとかに意識を向けるゆとりがなくなっている。相手が言っている言葉に反応しているけれど、その背景にある相手の伝えたいことを受け止められていない状態。

そんな意識で頭がいっぱいになっている時に口に出してしまう言葉というものは、自分は言い訳を言っているつもりではなかったとしても、多くの場合、相手にはバレてしまっているもの。相手は「自分が責められている」と感じてしまったり、または「この人には伝えたいことが伝わっていないな」「責任転嫁しようとしているのだな」という気持ちにさせられてしまう。

コンフリクトを解消するどころか、悪化のサイクルを加速しかねないのがこのdefensivenessで、うっかり癖にならないように注意しなくてはいけないものだと感じてる。

参考:The Four Horsemen: Defensiveness - Defensiveness is really a way of blaming your partner.

Stonewalling(無視・口を聞かない)

そして最後の四騎士さんはStonewalling。「石のような冷たくて固い壁になる」という英語から想像できる状態そのまま。ゴットマン博士の記事によるとcontempt(軽蔑・侮蔑)されることの結果として現れやすいのだとか。他の3つの騎士がある程度頻繁に登場するようになってから現れやすいこのstonewallingは一度習慣になってしまうととてもタチが悪い、ということも書かれている。

これが二人の関係性の間に登場してしまうころには、すでに相当の心理的ストレスが溜まっている状態で、建設的な議論をする状態でないことが多いので、一旦「休戦」をし、自分の状態を振り返り、自己を整えることに意識を向けたほうがいい、とも書いてある。

うまく対処・共生するには

人間なので、誰でもこういうコミュニケーションの悪癖というのが顔を出してしまうことはあるだろう。ゴッドマン博士は重要なのは以下の3つのステップといっていて、①こういう四騎士がいることをまず知識として理解する、②登場しているときはそれを自覚する、③より健全な別の「四騎士」と置き換える、と言っている。

“To drive away destructive communication and conflict patterns, you must replace them with healthy, productive ones. Fortunately, each horseman has a proven positive behavior that will counteract negativity."

その「より健全な」ものは、というのはThe Four Horsemen: The Antidotesという記事に詳しく書いてあるのだけれども、それをまとめたPDFもそのページから無料でダウンロードすることが可能だ。

健全なコミュニケーションのあり方に置き換えるには、批判・非難じゃなくて、「私は」を主語にするように伝え方をかえたり、相手を軽蔑するのではなく相手の良いところに光をあてたり感謝の気持ちを持つように意識する、そして言い訳や自己防衛に走るのではなく今起きている事象における自分が持てる責任は何かを意識して、そして、最後には、もう相手と話したくもないという気持ちに自分がなっているときは、まずはセルフケアに意識を向ける、そういう話。

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https://cdn.gottman.com/wp-content/uploads/2013/04/The-Four-Horsemen.pdf 

これらを「分かる」から「常にdefaultとして、行動できる」にするのは楽ではないのだけれども、自分の心身の体調が落ち着いていてゆとりがあるときなどは、これら右側の4つの行動・マインドセットを他者と関わる際に基本的なスタンスにはしておきたい。

自分自身の大人としての成長はもちろん、まだ1歳の子供にも、こういう大切なことを教えていきたいな、と思ったりする。

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