Tomoko Matsukawa 松川倫子

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「生産性のカルト」とスポンジ理論

半年ほど前に「Breaking Free of the Cult of Productivity」(「生産性のカルト」から自分を解放する)というポッドキャストのエピソードを聞いた。

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そのエピソードでは「アウトプットを出し続けなきゃ」という強迫観念を抱きがちな人に対して、毎日の「やることリスト」に追われない日々の過ごし方のtipsが紹介されていたのだけれど、その中でゲストのMadeleine Doreが言っていた「スポンジ理論」のことを忘れないようにメモしておこうと思う。

彼女が言っていた「スポンジ理論」はざっくり言うと:

質の高いアウトプットを出すには、質の高いインプットを集める時間や頭のスペース、アイディアを寝かしたりすることが大事だよ。 

呼吸をするときも吸い込まないと吐き出せないわけで、外から見える形で"doing"になっていないモードだったとしても、それは「生産的」になるために必要なプロセスなんだよ

という話だった。スポンジがスポンジとして機能するには、水を吸い込む時間が必要なわけで、という例えから「スポンジ理論」というネーミング。

また、質の高いアウトプットが出されるには、の流れを説明する上で「Stages of Creativity/Creative Process」も紹介されていた。

  1. preparation - 情報を集め始める

  2. incubation - 距離を置いて、無意識下の思考に自由に働いてもらう

  3. illumination - ひらめきの登場、何をどう深めるか・進めるかを考え始める

  4. verification - 具体的にする、行動を取る 

スポンジとして水を吸い込んだり寝かしたりするのはここでいう1~3のプロセスであり、それ自体にも4.と同じ価値があり、「やることリスト」が消化されるといった狭義の「生産性」のあり方にとらわれている人は自分をもっと自由にしてあげよう。そんな感じのメッセージが印象的だった。

ここ2年ほど、子供を育てながら在宅勤務を続けたり、自分一人だけがタイムゾーンの違うところから仕事をするということを体験しながら、自分の仕事に対する向き合い方とか根底にある価値観・信念などを意識することが増えている。

自分は、20代からずっとこの「生産性のカルト」の信者として走ってきた自覚があるのだけれども、最近特にそのカルトの信者として生活してきたことの自分の思考への影響(気づかず持っている前提やいつの間にか強くなっている信念)を感じることがある。2019年にCTIで研修を受けたときくらいから自分の中に存在することを自覚することができていたので、まあまあ適度に飼い慣らすことができつつある思考の癖ではあるのだけれど。

でも、最近そんな自分のデフォルトモードから脱してみたらどうなるのかなー(できるのかなー)と思うことも増えている。

きっかけはそんな自分のデフォルトモードとはかなり違う仕事観・価値観を持つ人たちの考え方に触れることが増えていることもあるかもしれない。それは「Z世代」について発信される内容をこの国で目にすることが増えていることが原因かもしれないし、Great ResignationやQuiet Quittingに関する情報を最近たくさんみていることがきっかけになっているのかもしれないし、コロナ以降生活を共にする時間が急増したパートナーや、日本でプロジェクトを一緒にやっている友人というかなり身近な場所に「アンチ『生産性のカルト』」の体現者がいる、ということも影響しているかもしれない。

今までも働きつつもwellbeingとのバランスを意識して〜みたいな話は「生産性のカルト」仲間の間でも存在してたし、自分もどちらかというとそういうことを意識していたのが過去数年だったと思う。でも、そういうのとも違う、なんか根本的に仕事や人生に対する価値観が違う(自己実現とか目的達成とかと切り離しているといったらいいのだろうか)人たちのことを意識することが少し増えてきた。彼らの考えていることや人生の楽しみ方、スポンジとしてインプットの集め方とか寝かし方とか自分とは違いそうで色々学んでみたい気持ちがすこーしだけ生じていたりもする(実際にできるかはわからないけれど)。

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