ベンチャーと組織づくり

今夜業務終了後に、同僚と足を運んでみたミートアップ。

テーマは「How to build meaningful employee cultures」

B Corp達による、B Corp的な人達に対するイベント

同僚の彼女は会社の人財チーム(英語では「Talent」)のメンバー。私が部門横断型に働くことが多いのと、前職時代での経験が人財に関わるものであったことがあって、良く一緒にディスカッションをする間柄。そんな彼女が「一緒に行ってみない?」と誘ってくれた参加費無料のミートアップ。場所はFlavorpillというベンチャ-のオフィススペース。足を踏み入れた瞬間、New Work CityImpact Hub NYCWix Loungeといったコワーキングスペースかと思って、受付の人に質問してしまったくらい、素敵な空間。

Flavorpill’s mission is to empower you to lead a more extraordinary life by connecting you with culture, people, and ideas that inspire you. (from their About page) (2000年創業)

始まる前から少しワクワク。

場のセッティングとして、どういう空間デザインかは重要だ。

今夜はBe Social Changeの共同創業者をモデレーターとして迎え、組織づくりというテーマについて、3つのベンチャ-をそれぞれ代表したスピーカーを参加者が囲む形式。(呼ばれていたベンチャ-のうちの一つは手作り作品のEコマースで有名なEtsy、環境に優しい建築資材を提供するIceStone、視覚障害者や盲目な方によってつくられたパーティー用グッズを販売しているSusty Party=全てB Corpとして認定されている企業ばかり)

このBe Social Changeという組織は以前から協業パートナー候補として注目していたのだけれど、やはり面白そうなところだった。

Be Social Change helps people build startups, careers & lives of purpose + impact.  

Be Social Change is a community-driven nonprofit on a mission to educate and connect the next generation of change makers. Through entrepreneurship education, community-building, and resource-sharing tools we empower people from all sectors and industries to pursue work they are passionate about and create lives that make the world a better place. Our vision is to create a world where every entrepreneur is a social entrepreneur, every career is an impact-driven career, and every business is a socially-conscious business. (from their About page)

共通項の多かった登壇者からのメッセージ

こういうイベントが毎日至る所で開催されているマンハッタン。我々も比較的目が肥えきている。イベントの成功はモデレーターとスピーカーの質で大きく左右される。かつ、他にもアフター5に時間を投資する先の候補が無限にある中での参加なので、参加者の我々もそこらへんの評価は比較的シビア。

でも、今夜は良かった。

このBe Social Changeのモデレーターが◎だったのと、登壇者達の経験が多様だったのが(10人弱のベンチャ-企業の創業者、40人程度の創業10年ちょっとのベンチャ-のマネージャー、そしてすでに600人以上の社員と3000万人以上のユーザーを抱えるEtsyの組織づくり専門部隊の担当者)成功の原因かと。

ベンチャ-のような、人もお金も足りない状態にある組織で後回しにされがちな組織周りの仕組みの話。実際の商品やサービスの創造、資金調達、営業&マーケティングに比べて直接的な金銭的リターンが存在せず、効果測定が難しい「組織づくり/人財への投資の仕組み化」。後回しにされたとしても、ある程度の規模に成長した人の集合体を運営して行く時に避けて通れない課題。その課題にどう向き合って来たかのエピソードや施策そのものの紹介は参考になった。

登壇者の発していたメッセージに共通点が多かったこと。自分が社会人になってから身を置く機会のあった4つの会社&前々職のコンサルティング時代に見聞きしていた他の会社達のことを思い出しながら納得するポイントが多かったのも印象的だった。

「分かる」と「出来る」は違うのだけれどね。

そういう意味でEtsy社の取り組みはとても参考になった。

600人規模になっている、創業2005年の会社が人事の中に専門のValues & Impactという部隊を持っているということが印象的で。そういえば、組織図を見ればその会社が目指そうとしていること、伝えようとしていることが分かるという、ローソン社の経営陣からのメッセージを思い出す。

メモしたキーワード達

  • Transparency(見える化)

  • Continuity(こういうことを推進する強いリーダーや創業者がいなくなった後も続くものはあるかどうか)

  • Natural(自然な形での導入)

  • Distributed responsibility(一人一人がオーナーシップを持って関わるものである)

  • Document and Reflect(リフレクションの大切さ)

  • Balance of tradition/innovation(古きと新しきのバランス)

  • Localization(それぞれのニーズは少しづつ違ったりする)

  • Office layout matters(空間の在り方を過小評価すべきでない)

  • Employee's happiness(それぞれに取っての幸せも多様な形がある)

  • Work life integration(ワークライフバランスという単語を嫌う人が多かった)

  • Identify strength(強みを強化する組織文化、弱みを克服したいという人に与える成長機会)

  • The right recruiting process(スキルのみならず、組織の大切にする価値観を共有し、かつ多様な視点を組織にもたらす人材をどう採用するか)

  • Increase avenue for collison(部門を超えて、様々な組織内の人材が交わり合う場をどつくり出すか) 

何度か言われていたことは「Organization is community of people」ということ。そう。「●人の組織」といったように、構成メンバー一人一人の顔が見えなくなってしまわないようにしないといけない。

(追記)ちょうどこういう記事が出ていました。DHBRより。

「アメリカでは年収7万ドルを超えた人たちにとって、お金は決定的なインセンティブにはなりません。成長につながる実感の方が重要なのです。この傾向は、とくに若い世代に顕著です」

「リーダーとして、スタッフの行動がどのように変わるべきかを明確にし、変化を促すために何を伝え、何を見せればよいかを自覚し、実行していく」ポイントはOJTも意図的なものであることが大事

「グローバルリーダーを育成する際に確認すべきは、動機レベルの問題か、知識レベルの問題か、自覚レベルの問題かということです。それを見極めたうえで、段階に応じたラーニングを提供し、成果を測定していくわけです 」

自分が大切にしていること

ベンチャ-を運営した経験があるわけではないけれど、「組織づくり」というテーマを意識して過ごし始めて4年目。そんな今の自分が信じていること/大切にしていることは以下の3つ。

  1. 組織づくりは意識的な取り組みが大切。組織文化やコミュニティの空気といったものは何もしなくても出来上がるもの。それをより良いものにするには、当事者意識を持ってこれに取り組んでいるリーダーシップを発揮する人たちの存在やトップのコミットが重要。

  2. 組織の規模が大きくなればなるほど、後から外科医的に処置するのが大変になるのが組織周りの課題。なるべく変動要因が小さな状態にあるときに、将来の成長を意識して仕組みづくり/浸透活動を始めておくことが大切。

  3. トップダウンのメッセージそのもののつくり込みよりも、組織内の一人一人が「組織の価値観やウェイを体言化する」ことに、どうやったら主体的に想像力を働かす機会を与えられるかをデザインするほうが大切。

これは、複雑性の低い「ボランティアの世界各地チャプターをつなげたネットワークづくり」で個人的に大切にしている信念。つながる相手が23都市であっても、50都市であっても、担当者が私一人でなく、複数人のチームになったとしても大切にしたいポイント。そこに最近自分は強いこだわりを抱くようになっているな、と感じる。

今の会社は世界7カ国・8拠点に80人が散らばっている状況で経営の難易度はおそらく高い。かつ、毎年70人ほどのフェローも輩出している。彼らも含めたステークホルダーエンゲージメント。自分はTalentチームの人間ではないけれど、引き続きこのテーマに対して社内で何か少しでも貢献できればと思っている。

ちなみに、今の組織についてWORKSIGHTさんが取材してくださったときの記事「貧困問題解決への意志をデザイン:支援者とリーダーを増やす(2014年5月19日)」 (もっともっと良くできる余地はあるねと今夜話していたけれど)

Previous
Previous

日本人でない美容師さんにお世話になった

Next
Next

朝7時のNYからFMはしもとに耳を傾けた