「グループ」「チーム」「コミュニティ」

よく最近聞く「グループ」「チーム」「コミュニティ」という言葉。
それに関して今回はちょっと整理してみることにしました。

まずは「グループ」という単語との出会い
最近RoschelleとTeasley(1995)が定義したという
CooperationとCollaborationの違いについて読む機会がありました。

日本語ではそれぞれ「協力、協同、協調」「共同、協力、合作」と
大きな差がないように聞こえる二つの言葉なのですが
彼らはそれらを以下のような区別しています。

■Cooperative work:
= a task that is accomplished by dividing it among participants
何かを成し遂げるまでに必要な作業が「分担されている」感があり

■Collaborative work:
= the mutual engagement of participants in a coordinated, synchronous
effort to solve the problem together
「mutual」(相互の)というところが上記との違いとして印象的
Roschelleは1992年にもCollaborationというものは
「convergence/construction of shared meanings」であると
書いている。

厳密にはここまではっきりとcooperative/collaborativeの
定義は分けられない、という意見も後に出て来たようですが、
これを見て思い出したのは秋学期に受講した「Group Learning」のこと。

その授業で何を勉強したかというと上記に沿って説明してみると
「the mutual engagement of learners in a coordinated effort 
 to learn something together」といった形の学びの在り方についてです。

グループで仲間と共にに「knowledge creation」に携わる、という考え方は
いわゆるSocial Constructivism学習理論の「Social」の部分に相当しますが
これは対象層が幼児であっても組織に属する社員であっても重要な考えだと
思い、Group Learningの授業はとても興味深いものとなりました。

例えば、ある「Group」が行っている作業がCollaborativeであるか
そうでないかを考える際に大切な切り口は4つある、と学びます。

これら切り口はあるプロジェクトを「Group」が取り組む際に
それはCollaborativeであるべきかCooperativeであるべきかを
考える時にも参考になる視点だったりするそうです。

その4つの切り口
・whatにあたる(グループが取り組む)タスクそのものについて
・howにあたる(グループが取り組む)プロセスについて
・whoにあたるメンバーの構成内容について
・whyにあたるコミットメントについて

個人的には最後のwhyが新鮮だったのですが、
たとえば自分達が「グループ活動」を行った後に、
Wilson教授からwhyの切り口からgroupの有効性を
振り返るために以下の問いをかけられます。

・Did members have compatible and/or shared purposes, goals, 
   values, and beliefs?
・Were members jointly committed to a final outcome?
・Were members committed to one another's personal and 
   professional growth?

これにYESと応えられたかどうかが、
真の意味でCollaborativeなグループ活動
であったかどうかの参考になるらしいのです。。

特に私達が上記のwhyの問いの最後の問いにYESと
答えることができるようになるまでには何度か
活動取り組み→振り返り→次回意識しながら活動、
のサイクルを回すことが必要でした。

このようにして「(Collaborativeな)Groupというもの」について
知識をちょっと身につけたのが2012年の冬でした。

そして「チーム」という単語に出会います
その後にWilson教授も関わりの深いHBSのEdmondson教授
「Teaming」という書籍に出会います(2013年春学期)

Edmondson, A. C. (2012). Teaming: How organizations learn, 

前述のWilson教授のLILAプロジェクトにEdmondson教授も
関わっていて、クラスメートのまとめた書籍の概要を読んでみました。

「『Team』ではなくこれからは『Teaming』こそが
 『Organizational Learning』のエンジンとなる」という主張、
「collaborativeでself-reflectiveなteamづくりを目指している
 21世紀型のリーダー達向けに」というキャッチフレーズ、
「効果的なTeamingに必要な4つの柱は①Speaking Up、
   ②Collaboration、③Experimentation、④Reflection」など、
Wilson教授のGroup Learningで学んだ「Group」という概念に
 近いものがある、と感じます。

そこで一旦私は「Wilson教授のGroupとEdmondson教授のTeamは
似ているものらしい」というように考えました。

と、同時に今まで社会人となってから「チーム作業」とか
「クライアントの対応をチームで」と自分が意識せずに
使っていた「チーム」という単語が本当の意味で
「チーム」なのか、どうかを少し考えるようになりました。

そんな感じで自分の中で「Team」という単語が
「CollaborativeなGroup」と同義のような位置づけで
頭の中に住むようになりました。(2013年春学期)

そして「コミュニティ」
世界に無料で提供するオンラインコースの
カリキュラムをデザインする立場になり、
Google Communityの初の運営側になることになります。

そもそもGoogle+はかなり前にユーザー登録したものの
そこまで使いこなす機会もなかった私。
以前MIT Media LabのResnick教授のMOOCクラスに
登録(途中で挫折・・)した際にGoogle Communityを
始めてユーザーとして体験したくらいの経験値。

さて、10000人以上が世界中から登録してきたコースの
参加者にとってどうGoogle Communityをデザイン+運営
すべきか。・・・自分にとって全く新しいチャレンジです。
(カリキュラムデザイナーとして採用されていたはずなのに
 コミュニティマネージャーっぽいこともすることとなるとは)

有り難いことにいつもお世話になっている市川さんを通じて
「コミュニティマネージャー」という(現代ビジネスの記事)
専門家の方々の存在を教えていただき、仲間に入れていただいたり、
また、同時にGoogle Community上でCommunity Managerが
集まり意見交換しているグループがあることも発見したので
覗いてみたり。まさにConnectivism的な学習の機会を
いただいています。。

当初はGroup/TeamとCommunityのつながりをあまり
意識していなかった私ですが今回のGoogle Communityが
「同じコースを受講している個人」で構成されていて、その存在意義が
「インタラクションの多様化+高頻度化による学びの深堀り」
であったからか、次第に「Group Learning」で学んだ内容との
親和性が高いということを感じるようになってきます。

そして「Group」「Team」「Community」って
似ているよね、違いはなんだろう、とぼんやり
考え始めていた時にこちらのブログに出会います。
「グループとチームとコミュニティーの違い」(Pachiさん)

面白いです。この整理の仕方。

こうやってみるとこのブログに書かれている
「グループ」というものが私のエントリーの冒頭に書いたCooperativeで
「チーム」がCollaborativeなもの。Wilson教授やEdmondson教授が
書いていることのような気がしてきます。

そうするとコミュニティはどういうポジションになるのか。
このことを考えた時に最近出会って面白いと感じた
Interactionの考え方が浮かんできました。

Suttonという方が2001年に書いた論文にあることなのですが
学びの場におけるInteractionには
その取り方の違いによって4つのタイプのinteractorがいるといいます。

①Direct interactor
 これは他の学生や先生と積極的に関わるタイプの人
②Actor
 これはunilateral inputを相手の反応やインプットに関係なく
 提供するタイプの人です(つまりキャッチボールにはなりにくい)
③Non actor
 何もしない人
④Vicarious interactor
 これがユニークなのですが、下の図に表してみました。
 直接関わらず傍観者のように見えるのですが、
 単なる傍観ではなくて「actively observing and processing 
 both side of the direct interactions that is taking place」
 つまり①の人同士のやりとりを積極的に観察し、
 そこから学びを吸収するタイプの人と彼は言います。

ちなみに個人に三つの輪があるのはそれぞれ
・学習内容とのinteraction
・教える側の人とのinteraction
・他の学習仲間とのinteraction
というのが昔から言われていた
三大学習にまつわるinteractionだったからです。

最近これに加え
・テクノロジープラットフォームとのinteraction
・Vicarious interaction
も重要になってきてると。


そういう枠組みで考えた時に上記のブログで整理されていた情報を
整理してみると以下のようにも捉えられるのではないかな、と
思ってみました。

・グループはDirect interactorとActorがいる人の集合体
・チームはほぼDirect interactorが占める個人の集合体(が理想)
・コミュニティは上記4タイプ全てを許容する個人の集合体
・・・・
Non actorという困ったさんはグループにも
チームにもいる可能性はありますが。


この、Vicarious interactorが存在し得るかどうかは
interactionの量や密度(つまり分母となる構成人数の数)にも
左右されると思うので、そう簡単に説明がつかない
ことなのかもしれませんが、、

引き続き、この「学ぶコミュニティ」というトピック
(特にface to faceに限定されない時代になっている今)が
Group Learningを受講した人間として気になります。




Previous
Previous

今後MOOC関連のニュースを追う前に

Next
Next

自分で色々と決めて来た系の人がぶつかる壁