不動産の内覧から契約まで〜ニューヨークにて
これはちょうど2ヶ月前くらいに書いた「5年ぶりに『ニューヨークで家探し』」の記事の続編です。前回の記事では物件の検索、ブローカーとのやりとり、内覧までのプロセスについて整理しました。
Excelに、どの物件を候補に上げて、どのブローカーにいつ連絡をとって、誰と何処の内覧をしたかという情報を整理していたので今回改めて見てみたところ、合計で50以上の物件を、10人くらいのブローカーと一緒に見ていました。もちろんメール上のみでのやりとりのブローカーは少しそれより多い数。短期間でかなり詰めたものです。思いがけずの今年の後半の一大プロジェクトでした(本当は来年の春先かなと思っていたので)。
前回の記事では「本当に気に入ったものがあったら、ブローカーに審査の申請をする」と書きましたが、今回はそのステップから契約締結までの話。
申し込み(Application申請)
どの物件でも一番最初に必要なのはApplication。入居者として合格かどうかを審査してください、という意思表明になります。大きくチェックされるのは以下のポイント:
家賃がきちんと払えるような収入があるかどうか
過去どのように「お金」「支払い責務」と付き合ってきたか
1の判断材料:具体的には①現時点での職場からの雇用証明書や②直近の銀行口座明細など。物件によっては納税証明書であったり(そこに前年度の年収も載っている)直近の給与明細書などの提出を求められます。大体は家賃の40倍があれば安心。
2の判断材料:ソーシャルセキュリティ番号に繋がっているCredit Scoreの状態を確認されます。Credit Scoreは色々な形で月次で確認することができますが、700以上あれば基本的に問題なし。それ以外にも現在の大家さんなどに家賃延滞がなかったかどうかなどの確認が入ることもあります。(参考:クレジットスコアとクレジットヒストリー アメリカ生活大辞典 )
物件によって求められるものは違いますが、私たちは以下の提出が必要でした。審査費用として一人当たり$75をクレジットカードで支払い。審査が通っても、万が一通らなくても戻ってこないお金です。
雇用証明書(人事からもらう、30日以内に発行されていることが重要)
直近二回分の給与明細書(人事管理ソフト大手ADPのポータルからダウンロード)
銀行残高明細書(アメリカ国内の口座に限る、家賃の3ヶ月分が確認できるのが理想、それが一つの口座で難しい場合は複数口座 [Saving, Checking, Investment] を送っても可能、それぞれの金融機関のオンライン口座からPDFダウンロード)
身分証明書(州の運転免許書、私はアメリカ人でもないのでパスポートとパスポート内にあるビザのページのコピー)
情報開示合意書(Authorization to release recordsというタイトルで今の大家さんの情報、銀行の情報、雇用主の情報を記載します、彼らに直接不動産会社がコンタクトすることを許可するもの)
これらには個人情報がいっぱいあるので、メールではなくbox.comを使いました。フォルダーを作り、PDFを格納、私と彼の情報の両方が揃った段階でブローカーのメールアドレスを「download only」として招待。box.comのいいところは向こうが資料をダウンロードしたらメールで通知がくるところ。ブローカーが資料を入手したと分かったらそのあとは迅速に資料をbox.comから削除しました。もちろん、それ以外にもwetransfer.comなどを使うこともできます。
ワクワクする部分もあるけれどカオスな感じもあるそんなプロセス
絵はチェルシーのギャラリーで見たMelissa Meyerの作品
審査通過後
私たちの場合「審査通りました!おめでとう」は申請完了の二日後にきたのですが、年末の忙しい時期だったせいか、その後が色々と厄介でした。
振り返って整理すると審査通過した後は以下のことを考える必要がありました。それを最初に全部教えてくれればよかったのですが、私たちの対応相手だった「マネージメント会社に雇われている人」はこれに関する情報提供のタイミングがバラバラだった為、初体験だったこちら側としては全体像を把握するのが大変で。その結果なんども電話・メールのやりとりをする羽目に。
大きく分けて5つのことを意識する必要があります。
青字は私たちが経験したこと。
契約開始後ひと月目の家賃
「ひと月目」とはいつの家賃のことか
私たちは「12ヵ月契約で追加1ヶ月無料」という物件だったので、1月から住むことになっても正式契約は2月からの12ヶ月というもの。1月は丸々家賃が無料ということ。だったので私たちが払うべき「ひと月目の家賃」=「2019年2月の家賃分」
金額は幾らか
「12ヵ月契約で追加1ヶ月無料」という物件はGross Rent、Net Rentという二種類の家賃が存在します。
説明:本来月1000ドルの家賃(Gross Rent)の物件があったとします。そこに13ヶ月住む(そのうち1ヵ月無料)と毎月の家賃は計算上だと($1000/month x 12month)➗13 = $923になります。それをNet Rentといい、多くのブローカーはこの金額をサイトに載せていることが多いです。キャッシュフロー的にはGross Rentを毎月払わなくてはいけないのですが(1ヶ月だけ払わない月がある、無料の月)。この段階で「最初のひと月分の家賃を払ってください」と言われた時の金額はNetではなくGross Rentなので要注意。「18ヶ月契約で追加1.5ヵ月無料」「24ヶ月契約で2ヶ月無料」という物件でも同じこと。いつもGross Rent分のお金を銀行から出す心積りで。
いつまでに支払うべきか
マネージメント会社の雇われ人がしばらくぼんやりしていたのか(その割にメールがきた時にはas soon as possibleという慌てぶり)審査に通ってから結局1週間以上の日程での支払いになりましたが、普段はもう少し短いはず。
どのような形で払うべきか
指定された宛先(マネージメント会社の組織)向けのBank Certified Checkを銀行窓口で作成し、その実物をオフィスまで手渡しというスタイル。普通に仕事をしているとそもそも銀行窓口にいく時間とかオフィスに出向く時間などを調整するのがやや大変
引越しの日時・契約開始の日
それぞれいつなのか
年末年始を挟んでいたということもあり、1月からの契約開始であったものの12月27日から入居してOKということに。Early occupancyなんとかという期間になる模様。建物によっては何時から何時までの2時間枠で引っ越してください、というのがあるのでそこも要確認。
異なる場合追加費用が発生するかの有無
私たちの場合は無し。
契約書(リース)
契約期間はどのくらいか
上記のearly occupancyなんとかが5日間あったので私たちの契約上の期間は1年と5日と記載
契約書のフォーマット
電子フォーマットで全てオンラインで契約書を確認し、そこでデジタル署名をする形。メールが送られてくる。On Siteという会社のサービスが使われていた、1999年創設。同社ホームページのトップページには「Finally, a leasing platform renters and housing providers can agree is innovative/reliable/secure/responsive/convenient/engaging」と。確かにユーザーとしての体験はスムーズだった。スムーズだったけれど、20の異なる資料が合体した合計69ページの膨大な契約書。
サイン(合意の証)の方法
On Site上でデジタル署名をクリックで。69ページ全てのページに署名かイニシャルの署名をする必要あり。
契約書を読み込み、合意すべき締切日
特に指定されなかったものの、69ページのe-リースがメールで届いてからできる限り早く、というプレッシャーはあり。実際には36時間以内に読み込み&全てのデジタル署名を二人とも完了(契約者が二人いる場合はそれぞれにリンクが送られてくる)
敷金(セキュリティデポジット)
金額は幾らか
私たちの物件では二つのオプションがありました。一つは通常のようにひと月分の家賃(上記の定義でのGross Rent分)これは退出時に戻ってくるもの。もう一つは「戻ってくる可能性の高い金額の大きい敷金ではなく、戻ってくる可能性ゼロのもっと小さな金額の「新型敷金」でOK」というもの。最近台頭している流れなのかこの後者の「新型敷金」払い込みのためのベンチャーが。マネージメント会社が指定してきたのはJetty(2015年創業)。
「敷金にバイバイ」とJettyのページ
いつまでに支払うべきか
契約書をサインする前
どのような形で払うべきか
私たちはJettyを使ったのでオンラインでクレジットカードで
保険(Renter's Insurance)
必要かどうか
契約書に保険に入ってください、という記載があります。多分色々なサービスがあるのでしょうが私たちは上記のJettyで加入しました。あとよく聞いた名前はLemonade(こちらも2015年創業)
どうやって加入すべきか
私たちはJettyを使ったのでオンラインでクレジットカードで。一年分に加入。
敷金の払い込みの確認後に、On Site上で私たちが署名をした契約書に向こう側、大家さん・不動産管理会社側が署名をしてきて契約締結です。もちろん迅速にひと月目の家賃の小切手を渡しておくことも重要(常に相手側がオフィスにいるわけじゃないのでこの日程調整もちょっと面倒)。そして、これから引越しの準備。業者を依頼するべきかどうか、費用はいくら、などそこでも色々と。それはこれから2週間のストーリー・・。
おまけ:契約書の中身
ちなみに、今回の電子契約書は69ページだった(20の異なる契約書の合体版)と書きましたが、周りの話を聞いていても賃貸でこれだけの契約書はあまりないようです。何度か繰り返して登場する情報もあったので、本当に69ページ必要だったかは不明ですが、どういうものが含まれていたかを記載しておきます(大きなもの)。揉め事が起きた時になんとかできるように、とりあえずたくさん盛っておこう、という感じでしょうか・・。
W-8/W-9(1ページ)納税申告書
賃貸契約書・標準的なもの (8ページ)+物件特有のもの(10ページ)
DHCR (State of New York Division of Housing and Community Renewal) Rider 家賃安定(Rent stabilised)物件なのでそれに関する契約書(18ページ)
Window Guards - NY(1ページ)
Move-In Rider(1ページ)Riderとは法律用語で「特約」という意味。
Early Occupancy Rider(1ページ)
Lead Paint Disclosure & Inquiry(2ページ)
Amenities Agreement(2ページ)
Bedbug Infestation History Disclosure(1ページ)
Building Rules(2ページ)
Fire Safety Plan(9ページ)
No Smoking Rider(2ページ)
Occupancy Rider(1ページ)
Pet Rider(2ページ)
Storage Lease Agreement(3ページ)
途中「キッチン・廊下・バスルームを除くエリアの80%には絨毯やカーペットを敷くべし」とあって、「え?!」と思ったのですが、これは標準でどの賃貸契約書にも書いてあることらしく、下の階に住んでいる人から騒音クレームがなければ問題ないとのこと。契約に書いてあるけれど、額面通りじゃないこともあるのかぁという学びもありました。
いやあ、疲れた。
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