Tomoko Matsukawa 松川倫子

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中国の高等教育Chongqing Univの取り組み

キャンパスの至るところで毎日繰り広げられているセミナー達
まだ授業もそこまでハードじゃないし、もともと
なんでも興味があったら足を運んでみる、という性格なので
かなりマイナー?な以下のセミナーに行ってきました。

「Progress of China's Higher Education and Chongqing University」

別にこの大学を知っていた訳じゃないし、
Chongqing(重慶)に行ったことがあったわけじゃないけれど
興味があって行ってみた。

想定通りたくさんの発見があったのでここに整理。
日本の大学がどういう状況なのか分からないので私は比較できないけど
詳しい人は比較して感じることもあるのではないだろうか・・・

■セミナー
・参加者は30名ほどだろうか
・教育学の大学院生はおそらくその中で10人弱(全員アジア人)
・他はほとんど教授だったり、ジャーナリストなどの「非学生」の人達
・質疑応答はほとんどが教育学の大学院生+一人アフリカ文化の教授+ジャーナリスト
・1時間

■まず重慶という場所について
・人口は2884万人(2010年) ※東京の2倍くらいですね・・
・第二次世界対戦中に暫定的な首都となった歴史がある
(1938年 - 1946年 (日中戦争時に、南京政府が重慶へと遷都していた時期)
・40以上の大学や専門学校が存在
・中国の市政機関(municipalities)の25%がここに存在
・とても強い'industrial tradition'がある(工業ということだろうか)
・中国でもっとも若い都市



■重慶大学の学長がスピーカー
・重慶大学は1928年創業、Fasting growing modern universityと
 紹介者は説明していた
・大学のスタッフ、教員のために4000軒もの住宅施設があるとか

■中国のHigher Education(高等教育)について
・ポジティブ面
 >過去10年の間に世界で最大のシステムに成長した
  それは中国の経済発展をうながし、若年層への機会提供にもつながった
   1990年代から規模化が進み拡大が進んだ
  2762の高等教育機関、3167万人の学生
  大学進学率も1998年は9.8%、2011年は26.9%に
 >大学は学術研究を促進させることに成功し、
  従来以上の金銭的サポートを享受することができるようになった
  特に入学者数の伸び率に比べて非常に高い投資資金の伸び率が2011年と2012年に見られた
  つまり学生の一人当たりリソースは急増しているというのがここ数年の動き
  例えば重慶大学も10年前に比べて4倍の資金が収入として2012年に得ることができた
  ちなみに同大学の資金源は42%が政府、29%が研究を通じたグラント、
  18%が学生から収められる学費、8%School Enterprise、3%がその他
  論文のアウトプット量も2006年の391論文?から2012年は1115とのこと

・ネガティブ面
 >近年の(高等教育機関が)提供するものの質の低下が懸念されている
   たとえばWEFのレポートによるとQualifiedエンジニアになるのは卒業生の
   米国では81%、インドでは25%、中国では10%
 >学生の海外流出も懸念されている
   2010−2011年度には6万人の高校生がアメリカの大学に進学した
  これは前年比43%の増加、しかもこれはアメリカのみの数字だ
 

■(上記ネガティブ面のつづきとして)何が変わったのか?
① 学生側の話
 ・12年間試験ばかりに注力した教育を受けてきた
 ・入試の勉強のみをしていた
 ・つまり彼らの受けて来た教育はvalues, ethics, responsibility, social service
      and practicesを無視したものとなっていた

② 社会側の話
 ・人材市場ではもっとwell prepared young generationを必要とするようになった
 ・不確定度が高い社会となっており、仕事を変えるということが珍しいことでなくなった
  そういう中でknowledge(何を知っているか)<personality(何を学べるか)が重視されるようになった
 ・Knowledge-based economyの中でイノベーションや起業家精神も重視されるようになった
 ・グローバル化が進み異文化の理解、自文化の理解、他国の人との恊働ができることが不可欠になった

■そのような変化に対して現状は・・・
高等教育機関のあり方は同じ
 ・工場形式
 ・また大学入学段階で学生側にpersonal ability/valuesが備わっているという前提を勝手に抱いている
 ・論理的に考える力、明瞭な文章を書く力、分かりやすく説明する力を学生に教えていない

更にひどいのは
 ・多くの高等教育機関は学部レベルのことはあまり注目していない
 ・大学や教授はリサーチを中心とした評価軸でランキングを受けることが多い
 ・リサーチの出来が教授の給料に連動していることが多い
 ・若い教員スタッフを教育するインセンティブが存在しないことが多い

■ただし重慶大学のLin Jianhua 学長は今が変革を起こすチャンスと見る
背景:政府の動き
 ・2020年プラン Strategic Plan of the Educationを政府が発表
 ・省は投資の4%を教育に投資すべし(2012年に達成済み)
 ・学部生には1000ドルだった補助金を2200ドルへ、
  博士課程の学生には2300ドルだったものを6500ドルへ

学長は教育機関による本気の姿勢が重要だと述べる
 ・規模の拡大はワクワクするし楽である現状で、
  大学側が本気でradical changeを意図しないといけない
 ・大学は非常に複雑なシステム
 ・自分達はすでに425ものreform projectを試行錯誤して続けている
 ・社会の流れとして変革が求められている、政府の支援もある
  今はonce in a lifetimeの機会と認識している
 ・自分達は「良い大学だけど特にそこまでスペシャルなものもない」大学である
  と認識しているがだからこそ「リスクをとり、教育により責任を持って
  改革を進める」意欲が強い、とのこと
 ・リーダーシップのチームによる総合的な改革が過去2年進められていて
  5年後のゴールに向かって今動いているところ、とのこと
 ・様々な施策の中には産業界とのコラボレーションやより若手教員の採用と
  育成なども含まれているらしい
 ・自分達の提供価値は誰のためなのか、学生と社会のため、そういうことを
  改めて考える必要がある

'Open the doors of classroom, talk to each other, more extracurricular activities'
'Open the doors of campus, more input from industry more practice and social activities'
'Open the door of country, sharing the experience, more exchange and cross-culture activities'

学部レベルでこういうことを考えている大学が増えて行くのはいいことだなぁと
思いましたが、今話題のMOOCのトレンドについてどう感じているのかが質疑応答で聞けずちょっと残念。
プレゼンの中でEmerging Challenge(台頭しているチャレンジ)で
情報化社会、既存の知識のあり方&管理のあり方に加え
new definition and mode of higher educationと言ってたのでそこを聞いてみたかったですが・・・。