Tomoko Matsukawa 松川倫子

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大学生と企業側の双方の期待値調整+準備が大切ですね、の話

若者の失業率というテーマで各国比較
前回のエントリーで紹介した「Aha!」で
同僚が共有してくれたもう一つの記事の話。
「What It Takes to Make New College Graduates Employable」

結論から言うと、タイトルと本文ミスマッチじゃないかな、
って感じた内容でしたが、採用〜育成、更にはその前段階に
横たわる「formal education(学校内教育)」に関わる話なので
ちょっと感じたことをまとめてみました。

ちなみに、ちょうどその記事に出会う前に、
OECDのEducation at a Glance 2013が発行されました。
(昨年の情報について簡単に書いたエントリーは こちら

まだ全然ゆっくり見れていないですがEditorial/Introductionを
さっと眺めただけでも若者の失業率の高さという、多くの国を
悩ましている喫緊の課題に対する危機意識が伝わってきます。

昨年も書きましたがこういうデータ比較は
必ずしもapple to appleでなかったりするので
ある程度の解釈リスクを意識しながら見る必要があるのですが
Indicator A5の「How does educational attainment affect
participants in the labor market?」の箇所が関係ありそうです。

さっと上記箇所を見て目が止まったのはTable A5.4aの
Unemployment rates, by educational attainment and age group
の各国比較。日本では最終学歴が大卒の対象者(25−34歳)で
失業率は4.5%、ドイツ2.7%、オーストラリア3.4%、
カナダ5.4%、アメリカ5.0%、など比較的絶対値としては健全そう
に見える国と(とはいえ、国民の何割の最終学歴が大卒かということを
勘案しなくてはいけないですが、最終学歴が異なると急に失業率が
上がっている国も見られます)ポルトガルの12.7%やトルコの10.8%、
イタリアの11.5%、ギリシャの25.6%などニュースで良く聞く話が
データでここでくっきりと。生まれた国によってここまで
仕事を得ることの大変さが異なるなんて大変なことだと思います。

ちなみに経年で見てみると大国アメリカは
2000年の2%から2011年の5%
(しかも高卒未満の対象層の25−34歳だと同時期に10.3%から
19.7%に上昇しています、失業率。高卒でも4.4%から13.3%。)
イギリスだって同時期に2%から4.7%
(高卒未満は9.1%▷18.9%、高卒でも4.7%▷8.2%の上昇)
短期的にアメリカのデータは足下改善しているようですが
若年層の失業率の上昇+高止まりは世界中ほぼ共通の課題の一つで
あるという意見がなんとなく分かるような気になります。


タイトルミスマッチだけれど考えさせられるNYT記事
そんな中発行されたNew York Timesの記事。 タイトルを意訳すると
「企業に(新入社員として)採用されるために必要なこと」
といったものでしょうか。しかし、記事の内容はあまり学生に参考に
なるようなことがなく、ちょっとがっかりでした(学生じゃないけれど)
アメリカの記事でも「釣り」ってあるのですね・・とはいえ、
こういうテーマで対話が進むのはいいことだな、とも思いました。

記事の簡単なポイント
・最近Chronicle of Higher Educationが発行した
 704の企業を対象にした調査によると
 最近の新入社員(学部卒生)に不足しているとされているスキルは
 以下のものが多いという
  >written and oral communication skills
  >adaptability and managing multiple priorities
  >making decisions and problem solving
 別の言い方で
  >collaboration
  >interpersonal skills
  >the ability to deal with ambiguity, flexibility and professionalism
 関連の能力に課題があることが多い、とも。
・また某HRコンサルタントの証言によると(顧客企業からの声がベース)
  >最近の若者は情報を見つけることに長けていても
   情報をcontext(与えられた状況)において考えることが苦手
  >最近の若者はテクノロジーを駆使することに長けていても
   それらのスキルを活用してビジネス課題に取り組むのは苦手
・このようにして「企業の求めている人材像」と
 「大学が育成していく学生達」の間に存在しているとされる
 「ギャップ」の存在、この話自体は今に始まったことではない
・大学側に文句を言うのはいいけれども、 採用した後に企業が責任もって
 育成することにも意識を向けたほうがいいのでは
 「companies must become more innovative in helping young
      employees come up to speed」というAccentureのレポートの紹介
・Accenture 2013 College Graduate Employment Surveyでは
 「 most recent college graduates expect employers to provide
     on-the-groud taining, but most of them don't actually receive it」
 が現状の問題点としてあげられているる、と。
 同社は 企業側の新卒社員に対する期待値の設定の在り方にも問題がある、と。
・大学側と企業側の対話をうながす仕組みとして Jobipedia.orgを紹介。
・企業側が求めている人材像として「skilled people with well-rounded
    backgrounds and the ability to think constructively」と
 最後に記事はまとめている(抽象的すぎて何を求めているのか言っていない
 のと同じだと個人的には感じる・・)


2つのポイント(企業様へ、学生様へ)
で、上記の記事を読んだ感想としては
①学生も企業もお互いに関して過度な期待値を持たないほうがいいね、
 ということ
②学生も企業も期待値と現実のギャップを埋めるために
 自分ができることをしていたほうがいいね、ということ

①については対応策として
 ・ しっかり情報収集をするということがあると思ったのだけれども
  具体的に何をするか考えてみた。
 
 ■ 企業側だったら、以前のエントリーで書いたみたいに
  採用プロセスをしっかり工夫すべきだと思う

  ↓こういう記事を見ると、企業側にも責任あるでしょ、と思うから・・

 ■ 学生側だったら、既存社員にでも元社員にでも、その会社の取引先
  でも、顧客/ユーザーでも、業界全体を見ているアナリストの意見でも
  なんでもいいから多面的に情報集することにエネルギーを使う。
  もちろん互いに食い違う情報だって入ってくるかも
  しれないけれど、タイミング+部署+個人の感度/性格/価値観に
  よってぶれるのは当たり前だし、それよりも多くのソースで
  情報収集すれば統計学的にも正しい姿に近づいて行くはずと思ったり。
   glassdoorindeedなどがグローバル企業だと参考になったりするし。
  直接人に会うのがやはり一番なので linkedinや知り合いに
  お願いするのも◎。
  ブラック企業の話が巷を騒がせているようだけれども、これも
  色々と仕組みの上の問題もあるような気がするけれど、
  学生側の事前調査不足という側面が完全ゼロか、と言われるとどうかな、
  と思ったりする。(一方、自分を含め、自分の周りでも
  「負のスパイラルへの落下」というものを予期せぬ形で入社数年後に
  体験するのを目撃/経験済みなのでやや複雑なイシュー・・・)

②については対応策として
・自分の現状と自分のありたい姿のギャップを埋めることについて
   他者依存ではなく自らプランを描き実行するということがあると感じる。

 ■ 企業側だったら、人材育成の中期計画を描きつつ実行する
  (ある程度のindividualizationやself authoring goalも重要かと)
  最近だとMOOCを企業内育成に活用した事例も少しづつ
  出始めているらしく、個人的にはここの展開に注目中。
   参考記事:Using MOOCs For Employee Development and
                   Orgaizational Leraning

 ■ 学生側だったら、NYTの記事にあるように企業に育成してもらうのを
  期待するのではなく、さっさと自分で自分に必要だと思うものに
  手を伸ばしていく姿勢、または質問していく姿勢が重要かなと感じたり。
  確かに7:2:1のルールでいう7に当たる「業務を通じて学ぶ」部分は
  全て自分でコントロールできないかもしれない。でもその業務に
  取り組む際に有効になるスキル(知識もそうだし、プレゼン能力の  
  ようなexecution skillもそう)は今やあらゆるところで自主的に
  学ぶことができる時代になっている。そういうことの試みを
  する前に「先輩上司があまり教えてくれない」というのは
  ちょっと甘えじゃないかな、と思ったりするのです。世界には
  YouTubeの鑑賞も十分に出来ないような国でも一生懸命オンラインの
  リソースを使って学ぼうという意欲を持っている人達がたくさんいます。
  社会的に教育を受ける権利が与えられていない人達もいるけれど、最近は
  オンラインというリソースを使って一生懸命自らギャップを埋めようと
  している人達がいます。日本という超恵まれた国で生まれ、おそらく
  ネット環境も不便なく整備されている人がこれらのリソースを使わない、
  ということはどうなのだろう、と感じたりもします。
  参考サービス: SkillshareIntelligent.lyLynda.com
  もちろんMOOC取りたければゴマンとあります▷ CourseTalkで検索

  以前ブログでちょこっと書きましたが
  スキル習得の前に人にはawareness(認識)とinclination(意志)の
  二つの段階が必要とされています。このブログを読んでくださっている
  企業側の方々、学生側の方々、皆様のステージはawareness, inclination,
      skill acquistionのどこらへんにいる方が多いのでしょうか。

  私も知らない事がたーっくさんあるので、自分個人のギャップを認識しつつ
  日々「埋め埋め」活動に勤しみます・・・。