Tomoko Matsukawa 松川倫子

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「嫉妬」との向き合い方

私の大好きなPodcast番組のHidden Brain。人の心理や行動に関わるテーマについて深掘りしてくれるもので毎回面白い。

Hidden Brain helps curious people understand the world — and themselves. Using science and storytelling, Hidden Brain's host Shankar Vedantam reveals the unconscious patterns that drive human behavior, the biases that shape our choices, and the triggers that direct the course of our relationships. - NPRより番組概要

その最新のエピソードは嫉妬という感情について。面白かった。

誰もが他人に対して一度は必ず抱いたことがあるであろう、後味の悪い嫉妬心。自分も、もちろん無縁じゃない訳で、たまに、他人に対してそういう気持ちになるようなことがある。でも、そんな自分は嫌だな、とその度に思う訳で。どうやってこういう気持ちと向き合うか、または一切そんな気持ちにならないようにするにはどうしたらいいか、そんなことに興味があったから、このエピソードを聞いてみることにした。

7つの大罪の一つの嫉妬

ちなみに、嫉妬(envy)という感情は、キリスト教(カトリック)で教えられる7つの大罪の一つであるというのはどのくらい知られているのだろう。このエピソードの冒頭でそう紹介されていて(7つの大罪は英語でseven deadly sins)私なんかは「あ、そうだったんだっけ」と改めて思い出す感じ。

6世紀後半頃から変わっていない、この7つの大罪は「放漫・高慢(pride)、強欲・貪欲(greed)、嫉妬(envy)、憤怒(wrath)、色欲(lust)、暴食・貪食(gluttony)、怠惰 (sloth)」。

そして、その逆のseven virtuesは「Chastity(貞操)、Temperance(節制)、Charity(慈愛・思いやり)、Diligence(勤勉)、Patience(忍耐)、Kindness(優しさ)、Humility(謙遜)」。

できることならsinsとは無縁でvirtuesいっぱいの人間になってみたいものだけれども、そうじゃないのが人間というもので。皆多かれ少なかれsinsの心当たりはあちらこちらにある。

Schadenfreudeという英単語

そのHidden Brainのエピソードではschadenfreude(シャーデンフロイデ)という単語がなんどもなんども使われていて、今回初めてこの単語を知った。由来はドイツ語で意味は「他人の不幸や失敗を喜ぶ気持ち」らしい。

experience of pleasure, joy, or self-satisfaction that comes from learning of or witnessing the troubles, failures, or humilitation of another - wikipedia

シャーデンフロイデの日本語のwikipediaには以下のような記述も。

ニーチェはシャーデンフロイデについて「平等性の勝利と回復についての最も卑俗な表現」と述べている。シャーデンフロイデとは何らかの不公正や不平等を感じていた者が、他者が見舞われた不幸によって果たされる消極的な復讐といえる

消極的な復讐・・・・卑俗。。。この単語は嫉妬という意味をもつenvyと並んでエピソード内で何度も何度も使われてた。 

これらの気持ちがムクムクと生まれたら

で、今回のエピソードでは、そういった嫉妬心を抱くような状況では、というメッセージが具体例を織り交ぜながら紹介されていた。大きくは二つ(かな、と自己理解)

  • 一つは、その時感じた嫉妬心だったり「消極的な復讐に対する欲求」を、プラスのエネルギーに転換するシナリオ。例えば自分の持っていない何か(物質的なもの、またはスキルといったもの)があって、それを全て手に入れている誰かに対して嫉妬を抱いた場合。その羨ましいという気持ちをバネに頑張っていけるといいね、というのが最初のメッセージ。

  • もう一つは、嫉妬心で身を滅ぼすこともあるから気をつけてね、という話。番組のメッセージとしては、そこに陥る前に、自分がそういった気持ちを抱いているという事実にまずは向き合おう、そうやってもう少し冷静な気持ちを取り戻してから、といったようなものだったと記憶している。

つまりどちらにせよ、嫉妬という感情を抱いた時、またその直後に抱くこととなる自己嫌悪感は拭い去れないのかあ・・とちょっとモヤモヤ気持ちにもなったエピソードの終わり方だった。

それで何となくモヤモヤを解決すべく、検索していたらBrainPickingsに面白い記事があった。タイトルは「Cicero on the Positive Side of Envy - BrainPickings」古代ローマの政治家、思想家であったキケロの考えを元にした記事。モヤモヤを解決してくれたのは以下の二つの点。

  • ...because our capacity for such anguish at the good fortune of another springs from the same source as our capacity for anguish at their bad fortune, which is the wellspring of compassion, envy may be a function of our lowest self but it is inseparable from our highest self...

  • 他人の苦境・不運に共感できてしまう力(同じ人間なのに自分と相手が違うということに苦痛を感じてしまう力)と他人の成功・富・幸運に共感してしまう力(その結果「同じ人間なのに自分と相手がちがうと言うことに苦痛を感じてしまう力)は表裏一体の関係にある

  • In other words, envy helps us identify what we value. The wise person, Cicero intimates, is not the person immune to such human perturbations (心の動揺) but the person who observes these emotions with openhearted curiosity, examines their causes, and uses those insights to better steer herself in the direction of what is envied in order to acquire these qualities and outcomes for herself....

  • Podcastのエピソードで言われていたことにも関係する内容。嫉妬を感じたと言う事実に向き合い、それを元に自分が大切にしているもの、習得するべき素質についてだったり、目指すべき姿に向き合う機会として活用していったらいいのでは。

そっか、そうすると嫉妬心とかシャーデンフロイデも悪い話ばかりではない。

そういう気持ちになりたくない、そういう気持ちを抱いたら押し込めよう、と思わず、むしろムクムクしてきたら、自分の中で表裏一体の関係にある片方が出てきただけなのだから、それに向き合おう、と考えればいいじゃない。自己理解の深化や自己成長のきっかけをもらったと捉えればいいんじゃないかな、といったように。

なるほどね。さすがMaria(Brain Pickingsの著者)です。

次モヤっとした気持ちがムクムクしてきたら意識してみようと思います。

そんなことを考えるきっかけをくれたHidden Brainのエピソードはこちら

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