ハックマンとオルダムによるMPS(Motivating Potential Score)
秋学期に受けた授業の中で、仕事に対するモチベーションについて学んだ。
仕事柄、「仕事に対するモチベーション」とか動機付けのあり方、といったことには在る程度触れてきていたけれども、HackmanとOldham(ハックマンとオールダム)による、この概念は初めて聞いたものだった。
なんと、1970年代後半に提唱されたものだというから、歴史は長い。
このMPS(スコアなので点数が算出される)は「今の職務は、働いている人に高いモチベーションを抱いてもらえるポテンシャルが大きいものかどうか」を定量的に診断するために使える計算式で、ハックマンたちが1976年に出した「Motivation Through the Design of Work: Test of a Theory」という本に紹介されている。MPSはツールの一つだけれども、理論自体はJob characteristics modelという名がついている。
モチベーションというと、人側に高めたりする潜在力が含まれているようなイメージがあるが、このMPSは仕事のデザイン(内容や置かれている環境を含む)にモチベーションを引き出すポテンシャルの大小がある、という考え方が基盤にある。
MPSを計算する際の5つの要素
そんなMPSは、以下の5つの要素に対する自己評価を元に計算される。
技能の多様性(Skill variety)- 仕事を遂行する上で求められるスキルは多様かどうか
タスクや期待役割の明確さ(Task identity)- 働いている人が自分の仕事の成果を見て理解し、それが組織全体の目標にどのように貢献するかを把握できることができるかどうか
タスクの重要性(Task significance)- やっていることは大切で有意義であるかろうか
自律性(Autonomy)- 自分で在る程度の自由をもって物事を進めることができる環境かどうか
フィードバック(Feedback)- 行った仕事に対して何らかのフィードバックを受け取ったり、手ごたえを確認できる機会があるかどうか
具体的には
23の問いに対して7段階(very inaccurateからvery accurateまで)評価をし、
上記の5つの要素それぞれの平均点数を計算し(1-7点)
その後以下の計算式を使いながら最終的にMPSを計算する。理論上は1点から343点というレンジにMPS(スコア)があることになる。
ピンクの部分は、どういう仕事内容かに関わる要素になっていて、緑の部分は仕事を提供している側がどういう関わり方をするかとか、本人の主体性を尊重した働く環境はどう整備されているかという話。
計算式をみると、この緑の部分が掛け算になっているので、MPSに与えるインパクトは大きい。
MPS(Job Characteristic Model)の課題
そんな感じで長い歴史があって、かつ現在でも引用されてたりしているこのモデル。
問題がないかというとそうでもなくて、たとえばMPSは個人差(価値観や性格特性)などモチベーションに影響を与えうるものを全て考慮していないね、とか、すべての職種や文化にはあてはまらないんじゃないのかな、という話や、政策などの外部要因や経済状況といった外部要因も考慮していないね、などという声はある模様。
とはいえ、仕事をデザインする、という文脈において、今いるところを振り返ってみたり、次の転職先のことを考える視点としては、このMPS、参考にしていきたい。具体的に計算したい方はオンラインに英語の質問リストや計算方法はあるので(こことか)、よかったら。
さらに学びたい場合は↑。彼らはもともとは1950年代にでてきたハーズバーグの二要因理論(動機付け・衛生理論)をベースにしているらしい。