Tomoko Matsukawa 松川倫子

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Design Thinkingワークショップって最近良く聞くけれど

以下は2012年の11月14日に書いた内容です、当時はまだ大学院生でした。つい先日マンハッタンで The Design Gymという会社の実施しているワークショップに参加しました。その話と、Acumenが3月末に提供するコースと「Design Thinking」つながりで関連するのでエントリ-を更新します。(Design Thinkingという概念に対するfamiliarityは個人それぞれだと思いますが、ここでは物理的に見えるデザインというより、ある課題の解決策をデザインするという意味での「デザイン」という単語の使い方がされています。一応前提として)

HBSのDesign Thinking & Innovationワークショップ

今学期HBSの授業の "Design Thinking & Innovation"の履修を希望したのだけれど残念ながら抽選に外れてしまい、取る事ができませんでした。同じような状況の人が多かったらしく、HBS側の配慮で今学期の下半期に単位なしのWorkshopが開催されることになったと連絡有り。もちろん参加希望、ということで11月1日から毎週木曜夜、iLabにて1.5時間のWorkshop(授業の短縮版)を受講しています。

初回はHBS教授の Srikant DatarSynecticsworld社のManaging PartnerであるJoe Gammal氏によるものでした。テーマは 「Introduction to Innovation & The Role of "Climate"」

カバーされたことは①クリエイティビティとは?イノベーションとは?という話、②The Creative Problem Solving Modelと FourSightという考え方、そして③Synecticsworld社のプレゼン(イノベーションと組織文化、行動)(同社は企業向けにクリエイティビティやイノベーションをメインとしたコンサルティングサービスを提供しているのでその宣伝)でした。

強調されていたのは以下の3つ。①水泳やピアノと同じでこのワークショップのテーマとなっていることは 練習+失敗+改善を繰り返すことによってのみ身に付くもの、②課題に対して多様な見方をすることを訓練すること、そして③innovationの定義は「usable, novel solutions to problemを生み出す活動」であるということ。

特に面白かったのは多様なtalentに関する話。X軸にASK(尋ねる)ー STATE(主張する・述べる)、Y軸にCONVERGENCE(収束系)ー DIVERGENCE(発散系)で4つの象限を想像してみましょう。そのマッピングを見ながら自分がどの象限に当てはまる人間かどうかを見極めてみましょう。それぞれClarifier Ideator, Developer, Implementerと呼ばれます、ちなみに私はIdeatorでした。

部屋の中でそこに参加している人達に自ら4つの象限を選ばせて、一番大切な能力は 他の象限にいる人のことを理解する力他者から学び、自分に足りない能力を少しづつ身につけていくことの大切さというメッセージを強調してました。

自分と異なる人間と関わった時にイライラしたり理解に苦しむ局面に陥ったとしても「Appreciate, understand, internalize」する必要がある、なぜなら 上記4タイプの人間がイノベーションには必要だから、と。 

その後「マシュマロとスパゲッティ」のグループワークをした上で「Pretty often you don't know what your solution will be」というデザインシンキング時のチャレンジや「don't get fixated on assumption」「balance between action and thinking」といったレッスンを提示。ちなみにこのマシュマログループワークは手法として超有名で、一番達成率が高いのが子どもで低いのがビジネススクールの学生という笑い話つき(この話をHBSの教授がHBSの学生がいるクラスで発言するのだから笑える)

子どもが一番上手と言われている「マシュマロとパスタ タワー」

また、コミュニケーションにおいて相手への伝わり方のうち、言葉・内容は7%、声のトーンは38%、non-verbalは55%だよ、という有名な話も提示されていました。紹介された参考資料一覧はエントリ-の最後にまとめておきます。

The Design Gymのワークショップに参加しました(2014年2月)

で、ここからが2014年2月に追記する内容です。上記のエントリ-を書いた時以来、Design Thinking系のワークショップに関するインプットも各種体験も増え(後述するコースの設計にも2013年夏には関与していたということもあったり、Acumen Chapterのリトリートの設計にもDesign Thinking系のアクティビティを取り入れていた事もあり)、特に新鮮味がなくなりかけたころ。

HGSE時代の同級生でマンハッタンにいる友人が行くというので私も久々に受講する側に行こうかなと思い、Design Gymの 「How to Kill Ideas, Not Each Other: Making Collaboration Work」に行ってきました。

2時間半のワークショップでしたがあっという間。そして終了後に抱いた感想は 「『(やり方が)分かる』と『出来る』は違う」という、極めて単純なもの。

設計側の事を理解しているから(つまり、どういうところでどういう学びのポイントが隠されているか、どうそのポイントとの出会いを最適にするかといった視点で場がデザインされているか、など)意識してしまうのではないか、と思いきや、action based/discussion based/group basedの学びの場にいつの間にか吸い込まれて行きました。

ちょうど、その数日前に参加した CLAの提供する Adaptive Leadershipの研修で感じたことも一緒でした。やはり学びの場のからくりが分かっていることと、その学びの内容を自分ができるようになるということは違うのだな、と改めて思いました。

毎回毎回押さえるポイント、鍛えるべき思考回路は似ているのかもしれないですが、与えられた課題やそのときの場のデザイン(ファシリテーターや与えられた道具/空間/時間を含む)と時間を共にするメンバーの違いによって毎回毎回異なる学びの体験が得られ・・

「答えが一つしかない課題」に向き合う「勉強」では一度答えの出し方が分かったらdone!になる一方で、ベストな答えが一つとは限らない課題に向き合う際の課題解決には何度も何度も手を替え品を替え(異なる条件下で)繰り返し課題解決力(Design Thinking力)を鍛えていくことが重要なのかも、と思ったりしたものです。

そういえばビジネススクールのワークショップで「 練習+失敗+改善を繰り返すことによってのみ身に付くもの」って言われていた・・当時はフンフンとそのメッセージを聞き流していましたが、改めて1年半たって、別のワークショップにいってようやくそれが腹落ちした、という感じでしょうか。

"Human Centered Design for Social Innovation"の宣伝

で、その流れで完全に宣伝になりますが、AcumenとIDEO.orgがコラボで2013年夏に初めて提供した無料コース"Human-Centered Design for Social Innovation"が再度(中身が若干更新されて)提供されます。登録締切は3月30日(西海岸時間で11:59pm)。物理的に毎週会うことが出来るメンバーで一緒に登録することをオススメしています。期間は7週間。予習+メンバーで会う時間はおそらく毎週合計で4時間づつくらいでしょうか。

詳細は こちらをご参考に。

既にNPOを運営されている方や、企業内で新しいプロジェクトの立ち上げに関わっている方や、ベンチャ-の仲間同士、大学生仲間やら、色々な方々が参加してくださっていますが(前回の登録者数は13,000でした)、まだまだこういうことを未体験の方も世界にたくさんいると感じています。

Playfulな学びの体験となると思いますので、時間のコミットは必要&送られてくる教材は英語ですが、もしご興味あれば。

 AcumenとIDEO.orgのつながりが分かる記事




おまけ:HBSのDesign Thinking & Innovationの初日に共有された参考資料

■Amabile, T.M. (2012). Componential Theory of Creativity. Harvard Business School.
※この教授の元で研究をしている博士課程の学生が以前このブログでも書いたLILA(Learning Innovation Laboratory)の活動に関与していました
 
※特にExecutive SummaryとChapter 2

■Chua, R. Y. (2011). Innovating at the World’s Crossroads: 
How Multicultural Networks Promote Creativity. Harvard Business School. 

■Gammal, J. “Deliberate Synergy.” SynecticsWorld White Paper. 

■Liedtke, J. (2011). The Catalyst. Racom Communications. 
※関係あるのはpp. 37 - 43と筆者が"The Virtuous Cycle."と名付けているコンセト。"This is on the role of affective traits on an individual's ability to succeed in innovation."とこのワークショップのコーディネータのコメント

※ここでいう「Cycle」はOperational WorldとInnovative Worldと間の絶え間ない交流のこと。前者は仕事の現場でよく言われるeffectiveness, efficiency, decision making, rational, TQM, procedures, routines, rulesなどで形容される世界。そして後者はspeculating, developmental, experiment, curious, immerse, question, connection makingなどの世界。この2つの世界には異なるマインドセットをそれぞれ求められ、同時に両方のマインドセットを人は持つ事ができない。意識的に異なるマインドセットのモードにスイッチすることが求められている。求められているのは"Ability to be mentally flexible"。柔軟性は大事です。また、自分の話している相手がどっちのモードにいるのかを理解するのも重要。Operationalにいる相手にInnovativeのモードの人間が提案をしていてもなかなかGOがでないというのもこのモードのずれによるもの、とのこと。

■Prince, G.M., Gilliam, T.K. “ Anxiety and Becoming a Person.” SynecticsWorld White Paper. 

■Prince, G.M. “Primer on Creativity.” SynecticsWorld White Paper.