組織にとって「歩留まりの高い」採用方法とは?
今日は「働き方が多様化するこの時代に人材を採用する側として考えていくべきことは?」についてちょっと書きたいな、と思ってます。
↑これ系のエントリーがウェブ上で増えている気がします。「働き方が多様化している(大企業の人向け)」「色々な働き方があってもいいんだ(学生+若手社会人向け)」「多様化する働き方に適応した組織づくりをするべきだ(企業の人向け)」的なもの・・・。
自分も過去数年の間に「働く」=「一つの組織に所属し、そこでフルタイムで(かつ比較的長い年数)コミットする事」から「働く」=「自分の時間を投資する先を取捨選択し、投資時間の間にそれぞれの場所でgive-giveの関係を築く事」というふうに考え方が変わったのを感じます。
以前は(社会人入りした2005年当時、初めて転職を経験した2010年当時でさえも「どこの組織に所属しようかな(WHERE)」ということを考えることが中心でしたが、最近は「何をなぜしている組織なのか(WHY)」ということや「どういう人を集めている組織なのか(WITH WHO)」ということ、それに合わせて「自分が提供できるものは?」「自分がそこで働くことで得られるものは?」「自分の時間をどのくらいそれに投資したいのか?できるのか?」ということも考えるようになってきました。
また上記の問いに対する答えを既に明確に持っている人から考えたこともない人まで色々な人が世の中にはいるということ、また答えを持っている人においては百人いれば百通りの答えがあるんだな、というように、「働き方」というテーマに対する価値観の多様性を許容する人間になったと感じます。
自分の時間(人生)を投資する上での「期待リターン」というものの捉え方も人それぞれで。経験や学びという形でそれを定義する人もいれば、組織の成長へ貢献しているんだというやりがいの人もいるし自分の実現したいこと/欲しいものを得る為の金銭的原資を得ることであったり、人との出会いであったり、これら全てのミックスであったり、と中身もその優先順位もバラバラなもの。
しかも同じ人間でも個々の人生ステージ+外部環境によって考えていることが変化したりと流動的なもの・・・なんだなぁ、と色々な人の事例に触れることを通じて、考えるようになりました。
前述のように個人の「働くこと」に対する考え方は多様化しているし、事業の外部環境の変化も個人の考え方の変化も激しい時代。採用検討時に見えうる範囲で「自分の組織にいる間にmaxでwin winの関係を築けるような人」にまずは入社してほしいと思うと思います。
具体的には ア)「自分の組織にコミットしてくれて、成果を出す為に自分に今足りないものを積極的に学んでいこうというベース(意欲、基本スキル)がある」人か、イ)「自分の組織にコミットしてくれて、既に成果を出してくれそうなスキル・資産がすでにある」人のどちらかであればいいかな、と。
でもこういう人達はどうやって見つけ、どういう判断基準でオファー提示まで持ってくればいいのでしょうか。Rick Jacobs氏は「"bad hire"一人が組織に与えるダメージは "good hire"一人が組織に与えるプラス寄与の二倍のロスを発生させる」と言っています。責任重大な採用プロセス。
個人的に上記のア)かイ)に適する人が「good hire」に当たるのだと思っていますが、どうやったら歩留まり高く、そのような人材に出会うことができるのでしょう。出会ったとしても前半の「コミット+組織に共感」の部分と後半の「能力/能力の可能性」の部分、どうやって見極めればよいのでしょう。。従来型の「エントリーシート&面接」システムは効果的なのでしょうか。自分はあまりそう思いません。
先日Adam GrantというWharton Business Schoolの教授の書いた記事を読みました。(その中に上記Rick Jacobs氏のコメントもあったのです)「What's Wrong with Job Interviews, and How to Fix Them」採用面接は「terrible predictors of job performance」であるという彼の主張。面接には面接実施側と受ける側の両方にリスクが存在するから、と彼は説明しています。
まず、面接実施側が犯してしまう傾向のあるリスクとして二点。① confirmation bias(面接を受けに来ている相手の中の「自分が見たいと思っている側面」が誇張されて見えてしまうバイアス、期待値にマッチしない要素を見過ごしてしまうリスク)② similarity bias(自分と似たような性格、態度、価値観、経歴を持った相手を自然と好んでしまうというバイアス)
一方で面接を受ける側に起因するリスクとしては別の二点。①面接相手の会社に望ましいと思われる答えを必要以上に全面に押し出す傾向があるということ(impression managementによる)②そもそも自身の能力を客観的に把握できていなく、過剰評価して語る傾向があるということ
自分個人の面接する側としての経験、面接される側としての経験を思い出しても、心当たりがあり過ぎます。面接の場というものは、お互いのフィーリングを知る上では有効だと思うのですが(上記の「コミット+組織への共感」の見極めには適している)「能力+能力の可能性」の見極めにはあまり有効ではないと思うのです。
「面接」のみで採用判断を下することは危険である、というGrant教授が示している代替案は・work samples(過去のプロジェクト)の提示を求めること、・situational judgment tests(課題を与えてそこで考える能力や課題取り組みに対する意欲や能力を見る)の実施をすること、・simulation(例えばTeach for Americaだと採用試験の一貫として実際に教師としてある時間内に授業をやることを求められる)の三つ。
科学的に上記手法が有効であることが立証されているにも関わらず、採用プロセスにこれらを導入している組織はまだ少ないと主張する彼は「 This creates a competitive advantage for those that are ahead of the curve: they’re better at spotting diamonds in the rough and screening out applicants who talk a good game but won’t ultimately deliver.」(ダイヤモンドの原石となる人材を見つけ出すという競争において他社に比べ一歩抜きん出ることができるでしょう)と言っています。
「我が社では時間をかけて社員を育成するので採用時は『意欲』だけでOKです」という組織にはあまり関係のない話かもしれませんが、働くということに対してある程度前述したようなこだわりを持っている個人を採用したいな、と思った場合や、転職市場から優秀な人材を採用したいなと思った場合、こういう多様な方法で「本当に自社組織に貢献をしてくれそうな人は誰?」という視点で採用プロセスを工夫する、ということが今後一層大切になっていくのではないかな、と思ったりしています。
ちなみに以下の記事で紹介されていたライフネット社は上記のsituational judgmentの事例だと感じました。「正しすぎるライフネット生命の新卒採用」(2012年8月アゴラ) 戦略コンサルで有名なケース面接はsituational judgment/simulationの融合系だと感じます。
関連エントリー
・【東京でのイベント】WIRED Session: Future of Work
・「The Future of Work Space」参加+α
・MOOCセミナー@MIT ①
働き方が多様化する時代
↑これ系のエントリーがウェブ上で増えている気がします。「働き方が多様化している(大企業の人向け)」「色々な働き方があってもいいんだ(学生+若手社会人向け)」「多様化する働き方に適応した組織づくりをするべきだ(企業の人向け)」的なもの・・・。
自分も過去数年の間に「働く」=「一つの組織に所属し、そこでフルタイムで(かつ比較的長い年数)コミットする事」から「働く」=「自分の時間を投資する先を取捨選択し、投資時間の間にそれぞれの場所でgive-giveの関係を築く事」というふうに考え方が変わったのを感じます。
以前は(社会人入りした2005年当時、初めて転職を経験した2010年当時でさえも「どこの組織に所属しようかな(WHERE)」ということを考えることが中心でしたが、最近は「何をなぜしている組織なのか(WHY)」ということや「どういう人を集めている組織なのか(WITH WHO)」ということ、それに合わせて「自分が提供できるものは?」「自分がそこで働くことで得られるものは?」「自分の時間をどのくらいそれに投資したいのか?できるのか?」ということも考えるようになってきました。
また上記の問いに対する答えを既に明確に持っている人から考えたこともない人まで色々な人が世の中にはいるということ、また答えを持っている人においては百人いれば百通りの答えがあるんだな、というように、「働き方」というテーマに対する価値観の多様性を許容する人間になったと感じます。
自分の時間(人生)を投資する上での「期待リターン」というものの捉え方も人それぞれで。経験や学びという形でそれを定義する人もいれば、組織の成長へ貢献しているんだというやりがいの人もいるし自分の実現したいこと/欲しいものを得る為の金銭的原資を得ることであったり、人との出会いであったり、これら全てのミックスであったり、と中身もその優先順位もバラバラなもの。
しかも同じ人間でも個々の人生ステージ+外部環境によって考えていることが変化したりと流動的なもの・・・なんだなぁ、と色々な人の事例に触れることを通じて、考えるようになりました。
採用方法はどうなっていく?
でこういう状況で大変だなぁと思うのは人材を採用する側の人達のこと。自分がもし採用する側の人間だったら・・・・とりあえず「自分の組織にコミットしてくれて、かつ、成果をある程度早い段階で出してくれる人材」を採用したい、と考えると思います。前述のように個人の「働くこと」に対する考え方は多様化しているし、事業の外部環境の変化も個人の考え方の変化も激しい時代。採用検討時に見えうる範囲で「自分の組織にいる間にmaxでwin winの関係を築けるような人」にまずは入社してほしいと思うと思います。
具体的には ア)「自分の組織にコミットしてくれて、成果を出す為に自分に今足りないものを積極的に学んでいこうというベース(意欲、基本スキル)がある」人か、イ)「自分の組織にコミットしてくれて、既に成果を出してくれそうなスキル・資産がすでにある」人のどちらかであればいいかな、と。
でもこういう人達はどうやって見つけ、どういう判断基準でオファー提示まで持ってくればいいのでしょうか。Rick Jacobs氏は「"bad hire"一人が組織に与えるダメージは "good hire"一人が組織に与えるプラス寄与の二倍のロスを発生させる」と言っています。責任重大な採用プロセス。
個人的に上記のア)かイ)に適する人が「good hire」に当たるのだと思っていますが、どうやったら歩留まり高く、そのような人材に出会うことができるのでしょう。出会ったとしても前半の「コミット+組織に共感」の部分と後半の「能力/能力の可能性」の部分、どうやって見極めればよいのでしょう。。従来型の「エントリーシート&面接」システムは効果的なのでしょうか。自分はあまりそう思いません。
先日Adam GrantというWharton Business Schoolの教授の書いた記事を読みました。(その中に上記Rick Jacobs氏のコメントもあったのです)「What's Wrong with Job Interviews, and How to Fix Them」採用面接は「terrible predictors of job performance」であるという彼の主張。面接には面接実施側と受ける側の両方にリスクが存在するから、と彼は説明しています。
まず、面接実施側が犯してしまう傾向のあるリスクとして二点。① confirmation bias(面接を受けに来ている相手の中の「自分が見たいと思っている側面」が誇張されて見えてしまうバイアス、期待値にマッチしない要素を見過ごしてしまうリスク)② similarity bias(自分と似たような性格、態度、価値観、経歴を持った相手を自然と好んでしまうというバイアス)
一方で面接を受ける側に起因するリスクとしては別の二点。①面接相手の会社に望ましいと思われる答えを必要以上に全面に押し出す傾向があるということ(impression managementによる)②そもそも自身の能力を客観的に把握できていなく、過剰評価して語る傾向があるということ
自分個人の面接する側としての経験、面接される側としての経験を思い出しても、心当たりがあり過ぎます。面接の場というものは、お互いのフィーリングを知る上では有効だと思うのですが(上記の「コミット+組織への共感」の見極めには適している)「能力+能力の可能性」の見極めにはあまり有効ではないと思うのです。
「面接」のみで採用判断を下することは危険である、というGrant教授が示している代替案は・work samples(過去のプロジェクト)の提示を求めること、・situational judgment tests(課題を与えてそこで考える能力や課題取り組みに対する意欲や能力を見る)の実施をすること、・simulation(例えばTeach for Americaだと採用試験の一貫として実際に教師としてある時間内に授業をやることを求められる)の三つ。
科学的に上記手法が有効であることが立証されているにも関わらず、採用プロセスにこれらを導入している組織はまだ少ないと主張する彼は「 This creates a competitive advantage for those that are ahead of the curve: they’re better at spotting diamonds in the rough and screening out applicants who talk a good game but won’t ultimately deliver.」(ダイヤモンドの原石となる人材を見つけ出すという競争において他社に比べ一歩抜きん出ることができるでしょう)と言っています。
「Organizations place far too much weight on interviews. It’s time for the pendulum to swing in the other direction. Instead of assessing how well people talk, let’s observe how they work.」
「我が社では時間をかけて社員を育成するので採用時は『意欲』だけでOKです」という組織にはあまり関係のない話かもしれませんが、働くということに対してある程度前述したようなこだわりを持っている個人を採用したいな、と思った場合や、転職市場から優秀な人材を採用したいなと思った場合、こういう多様な方法で「本当に自社組織に貢献をしてくれそうな人は誰?」という視点で採用プロセスを工夫する、ということが今後一層大切になっていくのではないかな、と思ったりしています。
ちなみに以下の記事で紹介されていたライフネット社は上記のsituational judgmentの事例だと感じました。「正しすぎるライフネット生命の新卒採用」(2012年8月アゴラ) 戦略コンサルで有名なケース面接はsituational judgment/simulationの融合系だと感じます。
採用方法も少しづつ多様化!
最近ではHireArtといった、新しい採用の在り方も一部の世界で注目されはじめていますし(TechCrunchの「Resumes Are Bullshit.HireArt Is Better」2012年3月9日記事)ソーシャルリクルーティングという単語も良く聞きます。また、学位を取っていなくても職種によってはMOOCなどで優秀な成績を収めた修了生を企業が採用することも出てくると言われています。このような新しい形の「採用の在り方」の話、「教育」と少なからずつながっている世界なので気になる世界です。関連エントリー
・【東京でのイベント】WIRED Session: Future of Work
・「The Future of Work Space」参加+α
・MOOCセミナー@MIT ①