(人の)考え方変える、というお話。

大前研一さんの名言の一つに 「自分が変わるために時間配分を変える、環境を変える付き合う人を変える、最も無意味なのは「決意を新たにすることだ」」というものがありますが、ここで話されていることは「人変わる」ために自分の意志で行動するときのお話です。

一方でApplying Cognitive Science to Teaching and Learningのクラスで今回学んだとても興味深い考え方「Conceptual change」はどうやったら学習者の考え方に変容を起こすことができるか、という「人の考え方変える」ための学習設計デザインのお話。(対象となる人にとっては迷惑な話である、となる可能性を秘めている)

もともと本人に変わる気がなければいかに外部の支援があっても意味がない&関わる人のエネルギーの無駄遣いである・・という考えを持ちながら教育学部に来てみたのだけれども、対象者の年齢層によってはこの考え方は変えたほうがいいかもな、ということを学んでいます。

余談・・・日本語って色々と難しいと感じます。 「人・考え方を変える」と書くとなんだかとても上から目線で、偉そうになってしまいます。正しいニュアンスを含めた上でどう日本語に訳していいか、思いつかないので、このままにしますが・・・

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1985年にStrikeとPosnerによって書かれた「A Conceptual Change View of Learning and Understanding」という記事を クラスのために読みました。

留学前のお仕事で「マインドセットの醸成」とか「行動変容」といった 育成難題に悩みながら取り組んでいた経験を思い出しながら読んだのですが、 この記事、約30年前の記事がどうして今回の事前課題パックの中に含まれていたのが納得!の内容でした。

前提となる考え方

  • 学習者は知識のretainerではなく経験や情報のprocessorである

  • その学習者の既知とのつながりをつくることが重要

  • 学びはadditive(足し算)なものである

  • 知識は(バラバラと渡される)各種経験より生まれ、その経験は我々の信念を形作る

  • 学びは「経験」と「その時点で有しているconceptions(考え方)」の間で起きるinteractionで生じる課題解決プロセスの中で生まれるもの

  • すべてのconception(考え方)は過去のconceptual developmentの結果である

  • 経験から学べるかどうかのスキルを左右するのはそれが学びの材料かどうかを見極める力(quality of the ideas)の有無

Conceptual Changeが起こる為に必要な4つの条件

  1. 現在持っている考え方に対する不満の存在(つまり、今までの考え方だと物事が説明できなかったり、前に進むことができなかったり)

  2. 新しい「考え方」がほんのわずかでも今の自分が理解できる内容であること(metaphorやanalogyなどを使って説明されたり、可視化されるのも有効)

  3. その新しい「考え方」に対して自分が良い第一印象を持つこと(従来の考え方では解決できなかった課題の解決につながりそうだと感じたり、既に持っている他の分野の知識や理論との一貫性、など)

  4. その新しい「考え方」に更なる展開の可能性が感じられること(自分にとって中期に有益になりそうだ、とかその考え方は他の場面でも応用できるのでは、などがイメージできること)※Conceptual Changeの伴うaccommodationと伴わないassimilationの違いに注意

従来信じていたconception(考え方)が機能しなくなった事態に直面した場合

人は大体の場合:

  1. rejection(実際に起きていることを受け入れない)

  2. consider it irrelevant(特に自分にとって重要なものでないと解釈する)

  3. compartmentalization(自分とは関係ないところの世界のことだと解釈する

  4. assimilate(自分の考え方は変えないけれどとりあえず順応する)といった対応をします。(従来のconceptionが確立されていればされているほどunlearnの心理的/エネルギー的ハードルが高まるのでこうなりやすい)(こういう場面こそがconceptual changeが起きる=学びの機会であるのですが)

assimilationではなくてaccommodationの特徴のいくつか

  • 従来のconceptionと新しく取り入れようとしているconceptionの綱引きなので、いきなり新しい考え方の取り込みがが起こることは少なく、段階を経てそれが起きる事が多い、段階的に自分のものとしてその考え方を吸収していく

  • その綱引きも中断や巻き戻しなども頻繁に起こる、不安定で決断力が衰える時期もでてくる、それが普通数歩前に進み、また後退し、ということを繰り返しnew conceptionがold conceptionに組み込まれて行く

  • 見せかけ(new conceptionが自分の考え方に入ったぞ!と思ったけれど実はそうでなかったケース)=とにかくスムーズなものではないのがConceptual Changeである

そして更に記事は上記Conceptual ChangeとUnderstanding(しっかり意味を理解するということ)の関係について説明している。段階としては minimal understanding, fuller understanding, accommodationという 3つの段階のunderstandingがあるようで、最初の二つは理解はしているけど自分の考え方を変えるといった「アイディアへのコミットメント」は特に必要としていない

Conceptual Changeを意識したカリキュラム設計は想像以上に奥が深い。そしてそれを適用させたカリキュラムデザインを学期末に向けて段階的にやらなければいけない私達。「産みの苦しみ」がやってくるのが今から既になんとなく感じられます。

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