Tomoko Matsukawa 松川倫子

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「Project-Based Learning」と人財育成

T-543 Applying Cognitive Science Research Principles to Learning and Teaching
Week#6向けの読み物の一つ

このクラスの読み物が面白すぎる。。
もっと他にも色々振り返りしたいものがあるのだけれどまずはこれ。
ちょうど手書きしていたノートのページがなくなったので、
朝2時というタイミングですが(授業は朝9時)メモ・・・・。
(読みながらメモ書いていたら3時半に・・)

Krajcik, J.S.& Blumenfeld, P.C. (2006). Project-based learning. In R.K. Sawyer (Ed.)
The  Cambridge handbook of the learning sciences, Chp. 19 (pp. 317-333). New York,
NY:Cambridge University Press.

■教授が事前にポストしていた 「この課題を読みこむ際の考えるべきポイント」
(一部抜粋)
1. Project-based learningについて筆者達が書いている5つの要素について:
 自分の過去の体験でグループ全体で一つのproblemやquestionに取り組み
 ながら学んでいったことを思い出し、その経験を「PBLの5つの要素」
 それぞれについて考察せよ

4. 自分の興味のある分野/トピックにおいてPBLの考え方を当てはめて

 考えてみてください。どのように学習者をengage することができるか、
(=学びに対して当事者意識を持ちながら主体的に取り組む)
 5つの要素それぞれにおいて考えよ。




■そもそもなぜこの手法が注目されるようになったか
・1990年代以降「従来の手法」で学んだ学生は実は深いレベルで概念の理解が
 できていないということが研究で明らかになっていった(Gardner, 1991)
 (優秀な大学に進学していた学生を含め、科学、文学、数学などの分野を問わず)
・もっと学習者のengagementを高め、大切な考え方をより深いレベルで理解
 できるようなカリキュラムや学びの届け方を模索する動きが強まっていった

■Project-Based Learningとは?
・学習者は「learn by doing」「learn by applying ideas」
・Situated learning (Greeno)の一種
Constructivistの考え方に基づく
・学習者にとって「ある程度重要な意味があり、かつ実際に社会で
 取り組まれているような(by科学者、数学者、作家、歴史研究家、など)課題」に
 取り組むことを重視
・学習者は問いを深く掘り下げ、仮説を生み出し、説明の各種案を模索し、
 アイディアを議論し、他のアイディアの可能性を検討し、更に別の案を探す・・
 といった学びのプロセスを体験する
・2000年代前半以降Project-Based Learningで学んだ学生のほうが
(従来の手法で学んだ学生に比べ)テストの点数が高いといったような
 研究結果が数多く出ている

■Project-Based Learning環境の5つの重要な要素(完全に意訳です)
Driving questionや解決すべき課題ありき
②課題解決にあたって学習者はauthentic, situated inquiryに参加する、
 inquiryを通じた試行錯誤を重ねる
③学習者、教える立場の人、コミュニティメンバー全体が
  collaborative activitiesに参加し、解決法を共に模索する
④学習者はinquiryプロセスをくぐりぬける過程において、
  learning technologyの利活用を通じて自分達の可能性を
 広げて思考を深めるという経験も得る
⑤学習者は課題の解決法を示すために tangible products/artifactsを創る
(共有可能になる)( 構成主義・構築主義についてまとめた先日のブログ

■Project-Based Learningの背景にある理論の数々
・もともとはprocess of (active) inquiryの父:Dewey(1958)の思想が発端
・今回のペーパーの筆者達は具体的に以下の4つの考え方に整理し説明
①Active Construction
 ・「only superficial learning occurs when learners passively take in information
    transmitted from a teacher, a computer, or a book」(p.318) そうそうまさに。
 ・「the development of understanding is a continuous process that requires
          students to construct and reconstruct what they know from new experiences
          and ideas, and prior knowledge and experiences.」(p.319) 
   別の課題で読んだ「Expert/Noviceの違い」でもExpertはunlearn
 (一度学んだことを問い直し、常に新しい発見を取り入れて柔軟に進化していく)
   ができる人、というのがありこの点に納得。
②Situated Learning
 ・どういうsituation(状況)にsituatedされるのが良いかというと
 「authentic, real-world context」(p.319)=なるべく現実の世界に近い設定が大切
 ・メリットとしては学習者が有意義である、と感じる可能性が高まり学びへの
  当事者意識が生まれやすいということに加え、単なる暗記による学びに比べると
  他の状況などに応用することがしやすい、という点があげられている
③Social Interaction
 ・様々な研究結果が示唆している真理。
  学びにおいてsocial interactionは非常に大切。
④Cognitive Tools
 ・学習学の研究結果によるとこれらの存在が学びの体験を一層深めるとのこと
  具体的な例としてあがっていたのはグラフ、データを可視化するような
  コンピューターのソフト、コラボレーションや共有を可能にするツール、理解を
  表現することを様々な手法で可能にするようなマルチメディア作成ツール、など


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今回の内容を自分にとって関連付けしやすい
事業会社の社員育成のHOWについて考えてみました。
具体的には 「研修で学ぶ&現場で学ぶ」の観点において。

後者の「現場で学ぶ」一般的に事業会社で働く人にとって学びの種が多くあると
言われています。確かに上記の4つの理論から考えてみると、現場というのは
①〜③が存在する可能性が高い環境かも、と思われます。
留学前にコンサルタントとして研修の設計・提案をしていた時を思い出しながら、
「研修で学ぶ」についても考えてみました。
研修の設計には細かいところで①〜③を出来る限り学びの場に組み込もうという
配慮がされています。
対象者に有意義な学びのポイントが含まれている可能性の高いケースを選択したり、
(②を作り出す工夫の一つ)、ファシリテーション力の高い講師の存在があったり、
(③を作り出す工夫の一つ)、中期にわたる自社課題取り組み系の設計だと
①も入り・・、など。
アートワークショップ冒険教育ドラムサークルダイアログインザダーク
なども考え方によっては①〜③の要素が入っている気がします。
クロスフィールズの「留職」も同様ですね。

最後はやはり④の部分。自分達のcapabilityを更にストレッチしてくれるこの要素を
活用しない手はない、と改めて思います。そう考えると「学びwithテクノロジー or
 without」という議論ではなくて・・・・・これからの学びの場設計に関わる人は
(人間同士でやらなくてはいけない部分や人間同士でしかやれない部分は
まだたくさんあるという前提で)「人間だけでは限られてしまう学びの可能性や
ツールを導入することによって拡大し得る学びの機会の可能性を理解し」
全体的な学びの場の設計を考えていくことがより一層重要になりそうだ、
と思います。そういう世界はなんとなく楽しそうな世界になりそうです。


つい先日読んだ 酒井さんのブログ「人間からコンピューターを引き算する未来」
ふと思い出しました。

IMAGE: ILLUSTRATION BY BRUCIE ROSCH