新生児ケアの時にコーチングのスキル・マインドセットが役立った話
自分の子供が産まれてから10週少しが経った。
もう10週、まだ10週、正直どちらかよくわからない。でも、わかっているのは、出産後 3日目に自宅に戻り、その夜以降、最初の2ヶ月が睡眠面では一番大変だったということだ。
今年は自分の周り(所在地は各都市バラバラだけれど)が出産ラッシュで、自分より少し早めに産後ライフを始めた少なくない数の友人に「最初の2ヶ月が本当大変だから」とか「最初の2ヶ月は記憶がない」と言われていたので多少の心の準備はしていたつもり。
とはいえ、10週経った今、はっきり言えるのは、うちの子の睡眠時間の短さ・睡眠量の少なさ(=我々の睡眠不足度)は「重症」の域であったなぁということ。母曰く、私も新生児・乳児のときあまり寝なかったらしいので、遺伝なのかもしれない。
そんな極限に近い睡眠不足の中で、与えられた「新生児ケア」というサバイバルタスク。コロナのせいで、頼りにしてた母の渡米もままならず、子供の父親と2人で協力しながらの2ヶ月だった。
その最中にいたときも、当時を振り返った今も思うのは「子供が生まれる前にコーチとしての勉強・実践をしていて良かったな」ということ。
なんでそう思うか。それを今回ここに記録しておこうと思う。(ちなみに日本語の新生児は最初の28日のことを指すのですが英語のNewbornは最初の2ヶ月を指します)
Co-Active Coachingモデル
以前ブログで書いたように、私のコーチング勉強はCTIというコーチングスキル養成学校への入学から始まった。そこが提唱しているCo-Activeモデルというものがある。(参考:What is Co-Active? CTI websiteより)
関連エントリー:Co-Activeコーチングを学ぶことに
実は直近少しだけそのモデルが改訂されたのだけれど、私が学び始めたときはそれは以下のようなものだった(一部を独自で再現したもの)。今回のエントリーはその、コーチとして重要なマインドセットの四つの柱が新生児ケアのカオス時に役立った気がする、という話。
以下ところどころに引用した日本語訳は
📗コーアクティブ・コーチング®と脳:神経科学の研究がコーアクティブ®・モデルの有効性を裏づける📗
というPDFより拝借している。
「コーチとして大切なマインドセット4つの柱」がどう役立ったか
その1:People are naturally creative, resourceful, and whole.
日本語訳:「人はもともと創造力と才知にあふれ、欠けるところのない存在である」「他者をもともと創造力と才知にあふれ、欠けるところがないと考える」
対パートナー:彼は彼なりの工夫や新しいアイディアがあり、新生児ケアというカオスの中で、私ができないこと・知らないことを提供してくれている、と捉えることで「なんでこうやらないの?」といった不満を抱いてしまうことを比較的避けることができた気がする。また、私のパートナーは感情の起伏が比較的小さい私とは正反対の「瞬間湯沸かし器」タイプ。最初の頃些細なことで(例えば赤ん坊の頭が自分の鎖骨に当たったとか、赤ん坊の首の後ろをやや強めに抱いてしまったなど)ワアワア騒いでいて「冷静に!(なんと落ち着きがない人なんだ)」と思ったこともあったけれど、people are ....を思い出しては「いや、その丁寧さが赤ん坊の心身の安全には重要かもしれない、大雑把で大半のことは大丈夫さ、と思っている自分みたいな人が家庭に2人いたら赤ん坊は怪我をしていたかもしれない」と思うようになった
対赤ん坊:自分が思ってるほどこの子は脆弱ではなく、きちんとした生命力を持っているんだと信じることで、必要以上に不安に陥らなくて済んだ気がする
その2:Dance in the moment.
日本語訳:「今まさに 100%この瞬間にいて、オープンかつ柔軟にいつでも応答が可能である状態」でいること、「一瞬一瞬に起きる変化にしたがって、そこにつながりを感じながら、対話の起伏に合わせてなめらかに動」くことを意識する
対パートナーも対赤ん坊も:その都度相手の発しているサインを受け取りながら、何が必要なのかを受け止めて臨機応変に対応することをdefault modeにしていった。昨日はこうだったから、前回同じことがあった時はこういう反応をしていた、にとらわれすぎず、もちろん「こうあるべき」にもとらわれず。その都度新しい「ダンス」が始まったとして、一緒に「踊る」意気込みで毎日を過ごす。「え?前回と違う」「期待値と違う」にならないように。うちの場合は4歳の猫ちゃんもいたので、赤ん坊に対する臨機応変で「踊っている」時にたまに猫ちゃんのニーズという変化球も投げ込まれてくることもあり、まさに「一瞬一瞬に起きる変化」に「オープンかつ柔軟にいつでも応答が可能である状態」を2人でなんとか維持して行った2ヶ月だったような気がしている
その3:Focus on the whole person.
日本語訳:「その人すべて(心、精神、身体、魂の全体)に焦点を当てる」「(クライアントが)持つ役割や特徴以上であるという視座から彼らの存在全体と向き合い、理解するということ」
対パートナー:彼は新米パパであり、私のパートナーであり、オムツ替えの担当であり、・・・などなどの役割を持っているけれど、それと同時にいくつかの本人のニーズがある。朝の寝起きのコーヒーが必要だし、私より肩を痛めやすく長時間赤ちゃんを抱っこはできない、赤ちゃんの泣き声が精神的に苦痛に感じる敏感さも私より高く、かつ私みたいに友達とtextやzoomとかで頻繁につながっているタイプではないので、オンラインゲームを数少ない友達とやることが精神衛生上結構重要だったりする。・・・・・そんな自分とは全然違う相手と向き合い、理解しようとすること。それはお互い自分の心身のサバイバルで必死な時期だからこそ重要なことであったと思う
対赤ん坊:もちろん身体的なニーズ(お腹がすいた、オムツが不快)第一ではあるものの、他のニーズもあるかもしれない、と想像力を働かせながら、原因不明の泣き声に対しても対応する姿勢でいれば「さっき授乳したし、おむつも替えたばかりでしょ、なんで泣いているのー」ということにならない。むしろ妄想力を働かせることでなかなか寝付かなくて泣き叫んでいるところも「なんか寝たら重要なイベントを見逃すとでも思っているのかな?いや、そんなことはないから夢の世界で楽しんできなよ」という感じでリフレーミングをある意味楽しみながら目の前にやってきたこの子に向き合っていったのも自分の精神衛生上悪くなかったと思っている
The agenda comes from the client.
日本語訳:今から取り組みたいトピックは、目的イメージは・・はコーチではなく、クライアントが自発的に決めていく
対赤ん坊:新生児ケアの時期は、赤ん坊が王様。私もパートナーも全ては王様の仰せの通りに。授乳なのか、オムツ替えなのか、ゲップをしたいのか、気温が不快なのか。いつどういう形で指示がおりるかは全て王様次第。我々はそんな予測不可能に起きる様々な事件にも臨機応変に対応できるようバッファーを心身持ちつつ、協力しあいながらエネルギーをそれぞれ温存し、2人の合計残存エネルギーが最大化できるように日々過ごすことに工夫をこらすこととなる、例えばどちらかが寝れるときは1時間でも寝てもらって、他方が踏ん張る、といったように
それ以外にも
自分の心身の状態を客観的に捉えて言語化する力とか、
「こういうことが私のストレスになる」とか「さっきのこういう行為はこういう影響を及ぼしていた」とかをオープンに伝える・受け止める力、
相手を受容する(acceptance)力、それに加えて、相手による思いやりの行為に気づくたびに感謝の気持ちをきちんと口にする(appreciate/praise)ことなど・・・
社会人として身に付けていく一般的なスキルではあるものの、コーチとして訓練される時に、より強化されるものでもあったこれらもサバイバルに役立った気がしている。
おそらくこれらは全部今後子育てを続けていく上で重要なスキルであるとは思うものの、以下のような異常な睡眠時間を体験することはそうそうないと思うので、今回はあえて「新生児ケアの時に」をタイトルに入れている。
とある1週間の授乳時間(オレンジ)とオムツ替え(青)24時間ほぼ休みなし。懐かしい日々・・辛かった。
赤ちゃんの足につけたウェアラブル Owletモニターによる睡眠トラッキング。この時もなかなかオレンジ(起きている時間)が長く辛かった。2ヶ月半たった今は8pm-7amの間の大半は紫(寝ている時間)になってくれている。まだこれを書いている段階では母はまだ1日6時間平均的には寝れていないのだけれどね。
関連エントリー: