日本の外で意識する「Sanpo Yoshi 三方よし」という考え方

毎年自分が楽しみにしているコーチ向けのオンラインカンファレンスの2週目が始まった。

以前はWBECS(The World Business & Executive Coach Summit)と呼ばれていた、このカンファレンスは今年で14回目。5万人近くの参加者が世界中から集まるイベントとなっている。(以前WBECSについて話していたエピソードはこちら:#022 - 【まなびあいシリーズ 】WBECS(無料のPre Summit参加体験談)

これまではセッションを聴く側の人間として、この時期に毎年行われているPre-Summit(無料、秋にある本番のSummitは有料)に参加していたのだけれど、今年は、少し勇気を出して「Implementation Mastery セッション」のファシリテーターとしてのボランティアに応募をした。

「Implementation Mastery セッション」とは、カンファレンスの各セッションに参加してスピーカーの話を聞いていた参加者が、そのあとZoom上で小グループ(4-10人くらい)に分かれ、感じたこと・考えていることを共に振り返り、それぞれの持ち帰りを昇華させるために設けられている時間。

ベテランコーチが多く参加する、そんな場のファシリテーションをするので、例年よりもスピーカーが話すセッションに集中して参加する必要があり、適度の緊張感を持ちながらカンファレンスに参加している。

そんな中で起きた今日の出来事。

まとめると

  • システムコーチ・チームコーチの巨匠であるPeter Hawkinsのセッションでwin-win-winという概念が紹介されていて、それが日本の「三方よし」に近かった

  • その後のImplementation Masteryセッションで、参加者の一つがその概念について感想を共有していたので、「日本ではこういう概念があってね」と「三方よし」のことを伝えたら、自分の想像以上に他の参加者からも強い興味を持たれた、「なんてスペルするの?教えて」と

  • (セッション後にSanpo Yoshiでよかったかどうかを検索してみたら)英語で「Sanpo Yoshi」について語っているサイトをいくつか発見。そこでの「三方よし」の概念に対する意味づけの在り方が、今の時代らしい、と思わされた

補足

  • リアルタイムで1500人近くが参加していたPeter Hawkinsのセッションのテーマは「Empowering Team Leaders with Team Coaching Strategies」。三方よし、の概念は、コーチングのクライアントであるリーダーたちの視座・在り方の発達段階の文脈で出てきた(以下その時のスライド)。個人的には彼のセッションは宝の宝庫で、PurposeとMissionの使い分けの話や、組織やチームの中でのTrust(信頼)の話、チームKPIというものの重要性と具体例もとても示唆深いと感じた。期間限定で今週末彼のセッションの録画は無料で見れるはずなので、興味がある人はこちらから。

  • Peter Hawkinsはチームコーチングで有名で、私の手元にも彼の本があるのだけれど(「チームコーチング――集団の知恵と力を引き出す技術」英治出版 2012年)、今年は新著を出すとのこと。10月の有料セッションはその内容をもとにしたものらしく、以下のようなことが扱われるらしい。

    • Uncover strategies to significantly enhance coaching’s effect on individuals and teams.

    • Explore the use of poetry and imaginative discovery methods in coaching.

    • Learn how to transcend ‘either – or’ polarities and discover the third possibility that transcends the dualistic frame.

    ポラリティマネージメントが好きな人間としては、最後のポイントも気になるし、直近のUpbuildでの体験を踏まえると2点目もとても気になる。

  • セッション後に、「Sanpo Yoshi」で検索した時にたどり着いた二つのサイト。ikigaiや風水といったものと同じで、ふわっと自分が理解したつもりになっている日本語のものを、ロジカルな英語で説明されているものを読むのは面白く、学びがある。

    • 「三方よしを世界に広める会」というサイト(英語のコンテンツあり)

      • 抜粋「Sanpo-yoshi is a valuable idea even in the context of modern society. The ‘three-way satisfaction’ it refers to means that what benefits you, should ultimately also benefit your partners and society at large. It is our hope that more and more people will embrace the sanpo-yoshi spirit – to make the world a much brighter and happier place.」

    • 「Sanpo Yoshi: the Japanese business principle of success through responsibility(Mediumの記事)

      • 抜粋「Centuries before the emergence of business buzzwords like Corporate Social Responsibility (CSR), Triple Bottom Line (TBL), B Corps, and Creating Shared Value (CSV), Omi Shonin were acting as responsible corporate citizens. AND they were doing well, financially speaking.」

  • 最後に、最近数年ぶりに、2017年の5月に自分がインタビューされた時の記事を読む機会があった。そこでもたまたま「三方よし」というフレーズが出てきて「へー、そんなことを自分は言っていたんだ」と思ったばかりだったというのも、なんだか不思議な流れだなと感じる。

    • 抜粋「Acumenにいると、売上や利益の拡大という指標ではなく、Purpose(社会における存在意義)といった側面から見た企業のあるべき姿という話をよく聞きます。そういう時には日本にいたときに担当させていただいたキッコーマンやサントリーなど、もともと社会のために存在することが出発点にあった企業のことや、日本で大切にされている「三方よし」の概念のことなどが頭によぎります。」

パーパス、チーム、リーダーシップ、コーチング。

そんなことを考えることが多い今日このごろ。そんな中、存在する、「三方よし」という伏線。かつ、それを、異国の地で、日本人が一人もいない対話の場で触れることがあるという、それが面白い。

そんなことを思った。

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