HGSE(ハーバード教育学大学院)受験プロセス
12月は色々と忙しくなる時期です。アメリカの大学院留学の準備をしている人は特に。
最近自分が今年卒業したHGSE受験関連で相談事を受けることがあったので、改めて一度整理してみようかな、と思いここに記します。ちなみにMBA留学を考えている方、または学部での留学を考えている方、アメリカ以外の国を考えている方はきっとそれぞれプロセスが違うのでこれはそこまで参考にならないかもしれません。
前提情報として、私は日本の高校を卒業した後(大学院を受ける10年ほど前)にアメリカの学部の留学も経験済みの人間です(なので英語力対策や各種英語の文章の作成プロセスなどは参考にならない部分もあるかもしれません。とはいえMBAではなく社会人として教育学の大学院に受験をするには、の参考になれば幸いです)
さて、二年前の今(12月半ば〜後半)東京で人事系のコンサルとして働きながら、一ヶ月以内にせまった大学院出願書類の最終準備にバタバタしてました。当時私はアメリカの3つの大学院の教育学部修士課程への出願を予定していました。その三校とも出願締切は1月の第一週。いつものように追い込まれないと集中できない私は結局全ての出願を締切日の当日、締切の数時間前に「Submit」ボタンを押した人間です。
このエントリ-では簡単に
時系列で何を準備したか
特に何を調査/準備したか
これをすれば良かった
を共有します。
大学院受験は自分の今までの人生の振り返りや自分の現状、これから行こうとしていることに向き合わざるを得ない、「半強制的なリフレクションの時間」なので、プロセスそのものから得る学びも多いひとときです。ただ、その最中は仕事やプライベートや自分の怠け心を含むその他の誘惑との闘い、答えのないものに向き合い続けるという体験が絡んでくるので結構辛くもなる時期です。
①受験を思い立ってから受けるまで
まず2012年1月締切の出願に対して2011年の8月に進学を検討し始めました。
これは相当遅いほうだと思います。でも、、数年前金融機関にいたときにMBA留学を検討したときはなんだかダラダラとしてしまって、結局受験まで踏み出せなかった経験があります。そのときに比べて今回は「もしかしたら・・」「行きたいかも・・・」と思った時から出願締切日から逆算したら日数がないことが分かり「ま、やってみるしかない」ととりあえず動き出した、という感じでした。学部の留学の時もそうだったのですが、自分は追い込まれないと集中できないという悪い癖があります。
その後、9月に上司を含めた相手に推薦書依頼のコミュニケーション。
HGSEは推薦書が3通必要です。私は学部を卒業してから7年以上経っていたので、推薦書執筆者には私の社会人経験を良く知っている人が適任でした。ということでGSの時の先輩(上司ではなく)とグロービスの時の上司二人にお願いすることを早い段階で決めました。
よく職位が上の人のほうがいいのか、という話がありますが、自分のことを良く知る人、具体的なエピソードを語れる人がベストだと思います。ということを意識して私はお願いする相手を選びました。
彼らにお願いをする前にどのプログラムに受けようと思っているということを決める必要があります。自分は当時「学びxクリエイティビティ」か「学びxテクノロジー」を深く学びに行きたい+米国に行きたい、という軸から学校検索をネットで始めました。学校によって推薦書の必要枚数が違うので誰に何通頼もう、みたいなプランもできあがります。
当時上司コミュニケーション前にそれぞれの学校の特徴についてまとめていたワードのファイルが出てきました。これ、後でエッセイ作成の時に役立ったな、と思い出しながら書いてあることをみると:学校の公式ページで見つけたプログラム、学校の説明書きなどをコピペし、キーとなりそうなフレーズのハイライト、オンラインコースカタログを見て取ってみたいクラスの一覧、それを教えている教授名やクラスの詳細など。学校によってはインターンシップのサポートだったり他の学校との単位交換制度などその学校ならではの特徴もホームページでアピールしています。それもエッセイ作成の時に役立つのでメモするのをオススメです。時間がなくてかなり雑につくったメモですが締切直前まで取り組んでいたエッセイ時に役立ちました。
推薦書を書いてもらう人達には
①●●の大学院のこのプログラムに出願したい、②なぜならば(卒業後こういうことをしたいから、持ち帰ってきたいから)、③自分の●●がこのプログラムに適している(経歴/業績的に、姿勢/スキル的に)と伝えていただきたいので、④③が伝わるようなエピソードを中心にこのフォーマットで××日までに推薦書をお願いしたい
みたいなことを伝えます。なのでそれらについても自分の中で整理したエクセルがありました。(結局この時伝えたことがエッセイを書いている途中で若干変わって来たりとかするのですが)
上記と同じタイミングでGRE受験をします。
MBAではGMAT、学部留学(米国)ではSATというセンター試験的な試験があります。この点数で足切りがされるだのされないだの色々噂はありますが、ある程度の点数を取るにこしたことはありません。模擬試験の受験やテキストの購入を通じてフォーマットに慣れ親しんでみるなど、できることはたくさんあります。
ちなみに私は9月に受験しましたが、私の場合はギリギリすぎなので同じ道をオススメしません。
TOEFL受験とGRE受験は地道な積み重ねと訓練(机上で勉強するのも大切だけれども金銭的ゆとりがあれば実際に受験してその場を体験することも大事、実力を直視するのも大切)という地味な努力の差が結果につながりやすいところなので自分のレベル/実力に合わせた時間配分をオススメします。短期的にスコアが上がることはあまりありません。多分。私も点数が微妙でしたがno choice状態だったのでとりあえず提出しました。
GREってどういうのさ?という方はETSのホームページを見るとか、アゴスのセミナーに参加するとか、受験対策のことをブログで書いている方のことを検索するとか、本屋に行くとか、色々方法はあります。なるべくこの事前調査は早いうちに(できれば夏休みくらいに)やっておくといいかもですね。
とりあえず、オススメというかMUSTだと思うのは提出期限1月の2ヶ月前までにはTOEFLもGREもクリアしておくことです。同時にそれまでに自分が卒業した大学に成績証明書を請求したり、オンラインで記入すべき出願フォーム上の基本情報などもコツコツと入力しておきます。結構この基本情報も学校によって違ったり細かい情報が必要だったりするので、必要な情報を各学校横並びでエクセルに記入し、終わるたびにDONEと記載して一人小さな達成感を味わったりしていました。
また、日本の人があまり慣れていない英文履歴書もくせ者です。
今まで一度も創ったことの無い方はかなり早い段階でつくり、フィードバックをどんどんしてもらっていくことが重要です。最近は日本人もLinkedinを持っている人が増えたのでなんとなく文化が浸透し始めているような気もしますが。Googleで英文履歴書と入力するとハウツーやテンプレートや見本、たくさん見ることができます。私は最後の最後までこの履歴書とエッセイに苦しみ続けました。(大学生の時からつくっていたにも関わらず)(2023年2月追記:AIのツールが爆発的に普及し始めているので、履歴書づくりも大幅に効率化が期待できる気もしています)
日本語の履歴書との決定的な違いは入れる情報をその履歴書の使用目的+読み手を意識しながら「デザイン」していくプロセスです。自分の経験のうち何を入れるべきか、どう入れるべきか、どこを強調してどういう数字で説得力を出すか。職歴と仕事外の活動、何をいれたら読み手に刺さりそうか、そういうことを限られた字数制限、フォーマットの中で最大限工夫することが求められます。何度経験しても大変な作業です。特に金融機関勤務5年、人材育成コンサルタント勤務2年弱、かつ学部がオフィスデザインとか学んだことが伝わる私の履歴書にどう「教育学」に行きたいんです感を出すか。大変でした。
ちなみに時間がなかったので翻訳会社?に推薦書の英訳を外注したのですがその内容がひどすぎて、そこもかなり苦労しました。もちろん推薦書は推薦書を書いてくださる方が書いて確認してその方に提出していただくのですが、英語がnativeじゃ無い方の場合ちょっと一緒に確認するプロセスが発生します。そこで想定外の作業発生。これは辛かったです。ネイティブやネイティブに近い知り合いの方がいたらその人にチェックをお願いするほうが変な翻訳会社に頼むより絶対いい、、と追い込まれながら痛感しました。(2023年2月追記:こちらもAIのツールのGrammarlyなどの活用をおすすめします)
②特に何を調査/準備したか
①のところに少し書きましたが、受けるところのプログラムや大学の特徴を押さえておくのは大前提です。あとはエッセイの構成のために必要なのは
①自分はこういう人間で、②こういうことがしたく(注意:学びたく、ではなく、中長期的な実現ゴールイメージ)、③そのために御校のこのプログラムのここがぴったりだと思う、④入学できた暁にはこういうことをして他者と学び合い、プログラムに貢献していく所存である、的なストーリーを準備すること。
そのために調査/準備すべきは①自分の経験や興味分野の棚卸し、②自分のゴールの具体化(これは人によってきっと難易度が違うと思われ、私は実はこれが結構難しかった)、③推薦書以来前に集めたデータをベースに出願対象の特徴を整理しておく、④自分が提供できる価値を理解、という感じ。
同時に過去大学院に出願経験のある友人(私は周りがMBA受験者ばかりでしたが)にPurpose of Statement(エッセイ)の例とか英文履歴書の例をもらい、参考にしてみる。実は後で気付いたことだけれども教育学部HGSE受験とMBA受験に求められるエッセイや英文履歴書のフォーマットは全然違ったのでできれば自分の受けるところを過去に受けた人/進学した人にもらえるのがベスト。
自分がエッセイを書き始める前に創ったメモはエクセルで、左の行に「伝えたいメッセージ」(上記の①〜④に相当するところ)、隣の行に「英文履歴書でハイライトする箇所」、その隣に「推薦書でハイライトをお願いする箇所」、その隣に「エッセイで強調する箇所」のようにして、自分の伝えたいことがまんべんなく提出資料の中で相手に届くような作戦を練りました。こういうのを考え始めたのが9月から11月上旬。10月の終わりくらい。いかに頭の中で色々構想していたり、メモベースで出来たと思ってもいざ書き出してみると本当難しいです。ということでもっと早くからwordを始めるべきだったと反省しています。(2023年2月追記:ここも繰り返しになりますがGrammarlyやChatGPTなどをアシスタントで使うんことで最初の書き出しの心理的負担を下げることができると思います)
最初のバージョンは確か父親に見せたのですが「何をいいたいか良くわからない」「個人のストーリーが伝わってこない、一般論すぎる」というストレートな反応でガックリしたのを覚えています。あとはひたすらエッセイと英文履歴書の修正、読み直し、修正、読み直し、フィードバックもらうのサイクルです。現実的に仕事も平日フルにあったり、フィードバックもらう相手がそんなに周囲にいなかったりで一人で孤独に回す回数のほうが多い、結構辛い時期です。
③これをすれば良かった
最近私の友人達でHGSEを受ける予定の人達は大体キャンパスに訪問に言っていたり、卒業生から情報収集したり、教授に直接コンタクトしてみたり、と当時の私がやれば良かったのにやってなかったことをきちんとされています。
私も、もっと受験先に対する事前調査をすれば良かったな、と。
きっと私がやったことは本当最低限のレベルのもので。もっと真剣に教授個人の研究内容とか、有名な著書とかを確認することは出来たはず。Twitterでキーワード検索して参考になりそうなイベント情報を集めたり、関係団体の存在を知ったり、卒業生の存在をしったり。もちろんFacebookやブログなどもキーワード検索でひっかかるものはたくさんあると思います。
また、受験先に対する事前調査のみならず、学習するテーマについての事前調査も今の時代実はたっくさんできる。オンラインに知識はありふれています。reach outするかしないかの違い。
大学院って専門知識を得るところに思われやすいですが、HGSEの1年修士プログラムなんて本当にアッと言う間です。渡米して入学したときから専門知識の習得が始まるのではなく、事前に「準備体操」していたほうがその場での学びの体験が絶対もっと有意義なものになっていたはず。自分はその専門領域に対する「準備体操」が相当少ない人間だったので、そこがちょっともったいなかった。
2011年に受験したときとは違ってEdXやCourseraといったMOOCが存在する時代でもあるので、今自分が大学院進学を考えていて、受験まである程度時間的なゆとりのある立場だったならばCourseBuffetやClass Centralで関連しそうな無料オンラインコースに登録し、関連知識に慣れて行くことをしていくと思います。専門分野の英単語に慣れることもできるし、勉強する習慣も身に付くし、エッセイに書く内容も豊かになるし、大学院が始まった後新しい知識を吸収するときの吸収度や教授への質問意欲だって一段と高いものになるかな、と。
そういうことを考えるとなおさらTOEFLとGREはさっさと終わらせておきたい。そういうふうに思います。
最後に
こうやって振り返ってみると・・・たった二年前。当時は大学院のためにアメリカに留学できるかも、どこの大学院に何を学びに行けるかもわからなかった状態でした。
その後の二年の間に、合格・不合格通知(2校合格、1校不合格)、仕事のwrap up、渡米・入学、10ヶ月弱の修士課程(短い・・!)、卒業、二年前は想像もしてなかったニューヨークでのOPT経験、グロービスを社員としては一旦卒業、ベンチャー入社と色々なことが起きました。
出願を思い立った時からたった二年、されど二年。
色々なことが起こるものです。自分は冒頭に書きましたが学部時代がアメリカの大学だったということでちょっと特殊な要素もあるかもしれません。HGSEの先輩達で彼らの出願経験などを詳しく書いてあるブログも紹介します。(2023年2月追記:おそらくLinkedinやTwitterなどで最近はもっと情報が見つけやすくなっている気もしますが)
Teach for Japanの松田さんが留学当時書かれていたもの「Life is Education 〜体育教師留学奮闘記」
お会いしたことないのですが「お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記」という本の本山さん。奨学金の話など参考になりそうです。「Boys, Be Hungry!〜世界を愛する学び録」
HGSEは修士だけでも以下のプログラムがあり(2013年時点)、色々なコースを横断で取れる柔軟性の高いプログラム(私がいたTIEもその一つ)もあります。近所にあるMITやTufts University、ハーバード内の他の学校(ビジネススクール、ケネディスクール、Public Health、デザインスクールなど)の授業を取ることも(競争率が高いクラスでなければ+スケジュールが合えば)できます。
Technology, Innovation, and Education(私のこのプログラムは40人弱)
過去は毎年10人ほどいたと言われる日本人学生(上記全ての修士課程の学生が毎年全体が700人弱)でしたが、私の前の学年は3人、私の学年は2人。今年は何人いるのか確認がされていない状態です。シンガポールから10人ほどが国費で来ていたり、韓国からも中国からも二桁の数の学生が来ている中でやはりもう少し日本人HGSE生が増えてくれてもいいのにな、と思ったのでこのエントリ-を書いてみました。
HGSE(Harvard Graduate School of Education)〜 Working at the Nexus of Practice, Policy, & Research。同校のミッションは「To prepare leaders in education and to generate knowledge to improve student opportunity, achievement, and success」
関連エントリ-:
何かに出願するということは半強制的に発生する深い内省の機会:出願書類で聞かれたこと
P.S. 2023年2月追記でAIツールが〜と何度か記載したことに関する追記です。「正しい」使い方は皆で模索中のAIを活用した各種ツールが注目されています。大学・大学院の他の受験生たちも皆アクセスのあるツールになってきているので、知っていた方がいいと思ってピンクの文字は今回改めて追記しました。友人とポッドキャストで教育現場の視点から感じていることも以下のように話したので、もしよければご参考まで。