日本の出生数90万人割れニュースを受けて

自分がフォローしている人たちの中の一定数以上の人たちがシェア・リアクションしている記事のアラートを届けてくれるnuzzleというツール。そのツールのおかげで、あまり日々細かく追っていない日本のニュースを比較的タイムリーにキャッチすることができていたりする。

そんなNuzzleが週末に流してきたニュース、2019年の出生数90万人割れほぼ確定、少子化は推計を2年前倒す急加速にという話。

日本の人口動態に関する話を聞くのは別に今回が初めてではない。私の同僚のパキスタン人でさえ今回の件、大して驚かないほど有名な日本少子化の話。

Japan's demography - The incredible shrinking country. Japan’s government has issued another alarming sign. Mar 25th 2014 - The Economist

Japan's population - The old and the older. Japan is ageing faster than any country in history. Nov 19th 2010 - The Economist

でもそうか、加速しているのか・・・と改めて厳しい気持ちになった。

「日本生まれです」という人たちはどんどんと減っていくということ。そして、高齢化する社会を負担していく働き手がどんどん減っていくといくこと。税金負担とかも大変そうだな、とか。

リーマンショック前後からよく話題になっていた話

一番最初の時に人口構造というものを自分が本気で考えるようになったのはリーマンショック以降の証券会社時代だったのだと思う。

日本株営業として日々バシバシ受け止めていた外国機関投資家たちによる「日本パッシング」の波(海外機関投資家たちが、日本をpassして、日本以外の汎アジア発の事業会社への投資機会を模索していたこと)。

結局当時悲観的論者として「日本は終わる」と言ってた人たちが言うほど大きな失望はそのころからの10年の間には起きなかったのだけれど(円の価値はドルに対して暴落していないし、生産性が低くて経営が厳しかった会社たちもなんらかの形で救済されていったり)

自分はあの時に見た色々なグラフが衝撃で、それ以降金融業界を離れたあとも「人口構造の社会・経済に対する影響力」については色々と意識するようになる。

渡米したあとに見たこの、The Economistによる1950, 2013, 2050年予想チャートはなかなか考えさせられるものがあった。1950年日本は5位。2013年は10位。もちろん2050年にはランク外。

By 2050, Nigeria's population will be larger than America's http://t.co/TZ452KjPwj#econarchive (2013) pic.twitter.com/cigH1uGY5w — The Economist (@TheEconomist) February 7, 2015

人口構造が違うと社会でのpriority agendaが当たり前だけれど違うと感じる。

例えば、今の仕事。今の仕事ではエチオピア、バングラデッシュ、ナイジェリアといった相対的に「若い」国のことを考えることが多い。若者の非就職率であったり、雇用創出・職業訓練といったことや、計画なしにたくさんの子供を産んじゃったりしないようにfamily planningに関する教育やヘルスケアサービスの普及というトピックが話題にのぼることが多かったりする。

40代だとoldと言われるような国と、日本みたいな40代だとまだyoungと言われるような国の違い。

アメリカでも、1983年1月以降に生まれたミレニアル世代以降の、人口への寄与度はすでに大きく、出生率も安定しているこの国なので、今後1983年以降の世代の割合は引き続き拡大していることが想定されている。だから、政治の世界でもビジネスの世界でも、その世代より若い層が今どういうことを考えているか、どういう働き方を選ぼうとしているか、どういう家族のあり方を模索しているか、どういう資産状況になっているか、どういう課題を抱えているか・・・など社会全体で話題にのぼりやすいし、おそらくあんまり耳を傾けたくないと思っている(であろう)既得権益の人たちだって一応トレンドは押さえているような印象がある。

オバマ大統領がもともと選ばれた時や、サンダーズ大統領候補がここまで人気な背景や、29歳の史上最年少の女性下院議員アレクサンドリア・オカシオ・コルテス(通称AOC [エーオーシーと発音])が誕生しちゃう背景とか、人口動態&少なからずの層を占める若者たちのlatest thinking & behaviorがいたるところで話題になりやすいアメリカという国。(参考:edamame talkポッドキャストで彼女について取り上げた記事はこちら 映画『Knock Down the House』から考える、女性リーダーの壁について

外で入ってくる日本の話

一方、私が一番最初に日本の人口動態の話を聞いた10年以上前から日本社会はどうなっているのだろう。「保育園落ちた」がバズった時はすでにアメリカに住んでいたというのもあるし、もう7年以上日本から離れてしまった私が理解できる日本のリアルはどうしても断片的になってしまって、本当のところがどういうことかはよく知らない。

とはいえ、頻繁にキャッチアップしている日本にいる友人たちからの話や、こういう記事の内容からしても晩婚化・非婚化は進んでいるような気がする。

Craving Freedom, Japan’s Women Opt Out of Marriage - The percentage of women who work in Japan is higher than ever, yet cultural norms have not caught up. More and more, women are rejecting the double standard. - Aug, 2019 New York Times

そして私のポッドキャスト仲間でwomen healthのエキスパートとして日本で活動しているさおりさん経由で聞いている話だと、妊娠・出産に関する知識の普及はアメリカより日本は少し遅れている感じもする(=出産適齢期を期せずし逃す人が多いのではないかという気持ち)

結婚をしないと子供を産めないと思っている人(経済的にそういう人もいるかもしれないけれど、経済的に選択肢がある人もそう思っている人はまだまだ多い)も多い気がする。

あとはこれもedamame talkの仲間と話していたことだけれど、一人目が生まれたとして生まれたあとの大変さは都市部は特に近年悪化しているような印象もある。

Japan’s Working Mothers: Record Responsibilities, Little Help From DadsMen in Japan do fewer hours of housework and child care than in any of the world’s richest nations. That keeps women from getting better jobs and holds back the economy. - Feb 2019 New York Times

again、私の限られた情報源&印象なので本当かどうかは知らない。

でも、今回のニュースで私が一番「まずいな」と感じた「2年前倒し」のところ、結構そこが一番心配なんだけれど。もともとの予測モデルにおいてのどの予想が甘すぎたのだろうか。そして今回のAha!を受けて、現実を反映した新しい試算モデルをつくるのだろうか。

このペースでどんどんと子供が少なくなっていったとき、日本はもっと多くのロボットやテクノロジーを活用した何かで人口減を補うような国になっていくのだろうか。

外国人がどんどん入る環境にしていくとはすぐには考えられないし(そもそも言語的にも文化的にもnon日本人が仕事をするのが難しい環境に、いかにご飯が美味しくて治安がよくて物質的に豊かで綺麗な環境だとしても、喜んでいく人がすぐに増えるとも思えない)どうなっていくのだろう。

その国に住んでいる同世代の私の妹や自分の親や。税金の話や年金(がそもそもあるのかはわからないけれど)の話や健康保険、社会保険の話。

考え始めたらきりがないのだけれど、とりあえずは世界の他の国とは結構違う特殊な環境なんだよ、日本の人口動態って、と言う話の共有と、informed decision making & strategic planning(資産形成・スキル獲得・キャリアに関する考え方)のきっかけづくり、くらいからかな、と思ったりはする。

こういう本もおすすめ。

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 - ハンス・ロスリング (著) - 彼のTEDトークもおすすめ

デフレの正体 経済は「人口の波」で動く - 藻谷浩介(著)

過去エントリー

Previous
Previous

世界の各大都市の住みやすさ比較データ

Next
Next

やりがい至上主義の罠